川崎病に対する冠動脈病変予測スコアの後方視的検討
大阪医科大学小児科1、清恵会病院小児科2、生駒総合病院小児科3
○森 保彦1、片山博視1、奥村謙一1、玉井 浩1、清水俊男2、清水達雄3
(背景)川崎病に対するガンマグロブリン(r-G)大量療法は確立された治療法であるが、大量投与にも関わらず冠動脈瘤を形成する症例は存在し、このような不応例を的確に予測することは困難であった。我々は、川崎病において冠動脈病変を合併するハイリスク群(H群)を r-G 投与開始後、3~5日目以内の早期に予測できるかどうかを、
1)37.5℃以上の発熱を認める. 
2)好中球数が 7,000 /μL 以上. 
3)CRP値が最高値より半減せず、かつ 3.0 mg/dL 以上. 
4)血清アルブミン値が経過中、3.0 g/dL 未満に低下した時期がある. 
5)GPTが経過中、 40 U/dL 以上の時期がある.
以上の 5項目中 3項目以上の症例をH群、2項目以下の症例をローリスク群(L群)とした冠動脈病変予測スコアを考案し、400mg/kg×5daysの r-G投与群で検討し、本スコアが r-G投与開始後3日目以降で有用であることを報告してきた。また、r-G超大量療法においても同様に用い、その有用性を報告した。今回我々は、本スコアに対し後方視的な検討を加えたので報告する。(対象と方法)対象は 1998年3月〜 2000年4月までに当院小児科に入院し、r-G 静注療法を施行した川崎病患児 37例である。r-G 投与法は、400mg/kg×5days 17例、2g/kg×1day 19例、1.5g/kg×1day 1例、発病から投与までの日数は平均5.2±2.8日であった。これらの症例に対し、本スコアを用いて治療を行った。(結果)37症例中、r-G 投与後3~5日以内にH 群と診断され症例は3例で、いずれも追加投与を行い冠動脈病変は出現しなかった。一方、L 群と診断された症例は34例でいずれも初回投与で症状の改善が得られ、冠動脈病変の出現も認めなかった。(結論)本スコアに対し、後方視的に検討した結果、いずれのグループも冠動脈病変の出現を認めず、その有用性が確認出来た。
川崎病の早期診断に関する検討
発熱日数が5日未満で診断した場合の影響について

日本大学医学部小児科  ○鮎沢 衛、谷口和夫、金丸 浩、
  山菅正郎、唐澤賢祐、能登信孝、住友直方、山口英夫、
  泉 裕之、岡田知雄、原田研介
【目的】川崎病の早期診断および早期治療を望むために、発熱が5日未満でも主要症状の1項目とすることが検討されており、その影響について検討する。
【対象と方法】昭和55 (1980) 年から平成11 (1999) 年の20年間に日本大学板橋病院小児科に入院した急性期川崎病613例について、後方視的に主要症状の発現病日を調べ、4病日以前に発熱以外に4つ以上の主要症状が揃っていた例(早期群)と、5病日以降になって発熱を含めた5つ以上の症状が揃って診断された例(通常群)に分け、両群の入院日数、退院病日、ガンマグロブリン療法(IVIG)の施行率と総投与量、IVIG開始病日、冠動脈病変発生率を調べた。 【結果】613例中、早期群に属する例は232例(37.7%)で、通常群は381例(62.3%)であった。早期群と通常群とを比較すると、年齢は2.0±1.6 vs. 2.3±2.4歳、入院日数は16.1±9.1 vs. 16.5±8.7日でともに有意差はなかった。退院病日は19.7±9.3 vs. 21.7±9.3日で早期群が有意に早かった(p<0.01)。IVIGは早期群中132例(56.9%)、通常群中183例(48.0%)に施行され、早期群で有意に施行率が高かった(p<0.01)。IVIG開始病日は4.7±1.85vs.6.0±2.2日で早期群が有意に早く、総投与量は767±86 vs.657±84mg/kgで有意差を認めなかった。冠動脈病変合併率は15.9%vs.18.4%で有意差を認めなかった。
【結論】これまで川崎病と診断していた例のうち、3分の1以上は、発熱が5日未満でも他に主要症状を4項目以上揃えており、早期に治療を開始され、早期に退院していた。IVIGの投与量、冠動脈病変の合併率は差がなく、早期の診断と治療がIVIGの効果に悪い影響をもつevidenceは認められなかった。
川崎病患児における自律神経活動の検討
〇岩崎直哉 坂田耕一 濱岡建城
京都府立医科大学附属小児疾患研究施設内科部門
背景  成人における虚血性冠動脈疾患では心臓迷走神経活動低下がみられることが知られており、このことが臨床的予後に大きく関与することが指摘されている。これより、川崎病患児の自律神経機能を評価することは、川崎病後の虚血性冠障を予測する補助手段となりうると予測される。そこで、川崎病患児にたいして、ホルター心電図を用いた心拍変動解析をすることによって、自律神経活動の変化および川崎病血管障害との関連性について検討した。
方法  急性期以降の川崎病患児12例、1歳4ヶ月〜19歳(平均9.0歳)について、平均心拍数から算出されたLF/HFの正常値と、24時間の心拍変動から得られた患児のLF/HFとを比較した。
結果  12例中9例にて、+2SD以上のLF/HFの増加を認めた。冠動脈病変を有している4例のうち、3例にLF/HFの増加を認めた一方で、冠動脈病変を有していない8例においても6例でLF/HFの増加を認めた。この冠動脈病変を有していないもののうち1例では、LF/HFが5.0と正常値1.65を大きく上回っていた。 考察  冠動脈病変による心筋虚血は、(1)心筋内を通過する自律神経線維や心筋内の自律神経終末の障害、(2)心臓からの求心性神経活動の変化とそれに伴う遠心性神経活動の変化を引き起こすと考えられ、これが迷走神経活動低下の原因と考えられている。川崎病におけるメカニズムについては今後の検討が必要であるが、心臓迷走神経活動の低下は、安静時心拍数の増加を介して冠動脈硬化を促進するとの説もあり、遠隔期の川崎病患者での心臓迷走神経活動の低下が、長期的に動脈硬化病変のリスクファクターとなる可能性も考えられ、今後の検討が必要と思われる。 結語  心拍変動の解析を用いた自律神経活動の評価は、川崎病の長期フォローアップの方法として有用である可能性がある。