経皮的冠動脈内血栓溶解術を3回施行したにもかかわらず
冠動脈内血栓が残存した川崎病の1例

近畿大学心臓小児科 ○福田 毅,原田直美、三宅俊治、篠原 徹
大和高田市立病院小児科 砂川晶生、向井修一
 症例は1歳男児。11カ月時に川崎病に罹患し、6病日からγ-globulin(γ-gl)400mg/kg/dayを5日間、第14病日からγ-gl400mg/kg/day を5日間使用したが、解熱しないため18病日当科に紹介入院となった。当科入院時の心エコーで3枝のgiant aneurysmを認め、CRPの高値(7.2mg/dl)、発熱も持続するため19病日にγ-gl2g/kgを投与した。それでも解熱せず、CRPも陰転化しなかった。28病日、心エコーで左右の冠動脈内に血栓エコーを認め、チソキナーゼ(t-PA)の持続点滴を開始したところ、右冠動脈内の血栓は消失した。しかしt-PAとウロキナーゼ(UK)を交互に使用したにもかかわらず左冠動脈内の血栓が消失しないため、33病日t-PAを用いて経皮的冠動脈内血栓溶解術(PTCR)を施行し、冠動脈内血栓の消失を認めた。しかし、45病日心エコーで再度左冠動脈内に血栓を認めたため、t-PAを再開した。さらに46病日、再度PTCRを施行したが、血栓は消失しなかった。その後もt-PAとUKの持続点滴や3回目のPTCR(75病日)を施行したが、結局血栓は消失しなかった。dipyridamole負荷99mTc-tetrofosmin心筋シンチグラフィー、dobutamine負荷心エコー、ガラクトース・パルミチン酸混合物によるコントラストエコーのいずれも虚血所見を認めなかったため、フルルビプロフェン、トラピジル、塩酸チクロピジン、ワルファリンカリウムの投薬のもとに85病日退院となった。現在外来で追跡中であるが左冠動脈内の血栓は持続している。
 巨大冠動脈瘤例は少々の抗血栓療法では血栓の発生を予防できない症例もあり、PTCRや血栓溶解剤の全身投与を行なっても有効でない症例もある。本例は長期に多量の血栓溶解剤を使用し、幸い大きな副作用の発生を認めなかったが、血栓溶解に対しては十分な結果がえられなかった。そのため巨大冠動脈瘤に対する抗血栓療法については検討が必要と思われる。
冠動脈瘤内の壁在血栓に対して血栓溶解療法を施行し、
血栓の消失をみたものの
急性心筋梗塞を生じた川崎病の一例

帝京大学小児科1)、東京大学小児科2)
◯福岡雅楽子1)2)、代田道彦1)、中山豊明1)、萩原教文1)、柳川幸重1)
症例は2歳の男児。平成11年10月21日より発熱、第9病日に5日以上の発熱、手足の硬性浮腫、眼球結膜の発赤に加え、心エコーで両冠動脈の輝度上昇と左冠動脈4.8mmと拡張を認め、不全型川崎病と診断された。同日γ-globulin 大量療法(2g/kg/dose)を施行し、解熱が認められた。第15病日に左右冠動脈瘤が認められ、経過観察目的で当院に転院となった。抗血栓療法として、アスピリン(5mg/kg/day)の内服に加え、ヘパリンの持続静注(20 U/kg/hr)を開始したが、第22病日に左前下行枝の瘤内に壁在血栓を認めたためウロキナーゼ2000 U/kg/hrの持続静注を開始した。翌日の心エコーでは壁在血栓の消失を認めたが残存血栓を考慮してウロキナーゼを同量で継続した。第25病日、嘔吐があり心電図上でV3〜V5にSTの上昇を認め、血液検査上も心筋逸脱酵素の上昇を認めた。急性心筋梗塞と診断し、ウロキナーゼの増量(4000 U/kg/hr)とヘパリンの持続静注(20 U/kg/hr)を併用した。その後、自覚症状の消失と心筋逸脱酵素の低下を認めたため、第27病日にウロキナーゼを減量(2000 U/kg/hr)した。第28病日、激しい腹痛と嘔吐が生じ、再び心電図上でV2〜V5のST上昇が増強した。急性心筋梗塞の再発を疑い、心臓カテーテル検査を施行した。結果、心尖部壁運動消失と左冠動脈前下行枝末梢の描出遅延が認められたため、冠動脈内血栓溶解療法(PTCR)を施行し、同部位の描出は良好となった。心筋逸脱酵素の上昇は認めず、心内膜下虚血の状態であったと推測された。その後、血栓溶解剤の使用をせず、塩酸チクロピジンとワーファリンの内服を開始、新たな症状を認めず順調に経過し、第114病日に退院となった。
ヘパリン静注療法が有効であった両側巨大冠動脈瘤の川崎病の1例
天理よろづ相談所病院小児循環器科  ○松村 正彦,須田 憲治
 ヘパリン静注療法は,虚血性心疾患の患者に血管新生を促進させる目的で,ヘパリン静注後狭心痛が生じるまでトレッドミル運動負荷を行う療法で,乳幼児では運動負荷量が問題となる。今回,我々は両側巨大冠動脈瘤を生じ,左冠動脈前下行枝の完全閉塞後再開通とともに,回旋枝の完全閉塞を来した川崎病児に,ヘパリン静注療法を試み心筋シンチ上改善を認めた症例を経験したので発表する。
 症例は1歳男児。生後8ヶ月時に川崎病を発症。当初他院で発症に気づかれず,第20病日に右上下肢マヒにて入院となった。頭部CT検査にて左前頭・頭頂部の脳梗塞と診断された。心エコー図では,両側巨大冠動脈瘤と左冠動脈前下行枝の完全閉塞,中等度の心嚢水貯溜,前壁中隔の奇異性運動を認めた。
 アスピリン内服およびヘパリンの持続点滴を施行していたが,第27病日に右冠動脈瘤内に血栓様エコーを認めた。冠動脈造影(CAG)では,右冠動脈と左冠動脈主幹部から前下行枝にかけて数珠状の冠動脈瘤を認め,左前下行枝はその起始部で完全閉塞していた。両側冠動脈内にt-PA3万単位/kgを2回ずつ投与し,瘤内血栓の縮小を認めた。頭部CT検査では,新たな出血は認めなかった。その後臨床症状に変化はなかったが,再び動脈瘤内に血栓様エコーを認めたため,第34病日と第43病日にCAGとt-PAを用いた血栓溶解療法をそれぞれ施行した。左冠動脈前下行枝は再開通したが,左回旋枝が完全閉塞し,繰り返す血栓溶解療法にも再開通せず,ワーファリン内服にてのコントロールを行なうこととした。
 冠血管新生を促すために発症8ヶ月後よりヘパリン静注療法(100U/kg, 2/日, 4週間)を試みた。運動量は右不全マヒもあり,特に規定しなかった。治療前の心筋シンチでは,心尖部と下側壁に再分布を伴う潅流欠損を認めたが,治療後は下側壁の潅流欠損は著明に改善していた。その後週1回の静注療法を続けている。