第15回川崎病全国調査から得た施設特性
○ 上原里程1)、中村好一2)、屋代真弓2)、梶井英治1)、柳川洋3)
1)自治医大地域医療学、2)自治医大公衆衛生、 3)埼玉県立大
[目的] 第15回川崎病全国調査で報告された施設の特性を明らかにする。
[方法] 1997年から1998年の2年間の患者を対象とした第15回全国調査では、小児科を併設する100床以上の病院、および小児科のみを標榜する100床未満の専門病院のうち1,825施設から回答が得られた。これらの施設の病床数、小児科医師数、γ−グロブリン製剤(以下IG)の投与方法および投与基準そして冠動脈造影(以下CAG)実施について観察した。また、小児科病床数別およびCAG施行数別の検討を加えた。
[結果] 川崎病新規患者を診察した施設は1,071ヶ所(58.7%)であった。小児科病床数では、病床のない施設が378ヶ所(20.7%)であり10床以上25床未満が413ヶ所(22.6%)と最も割合が高かった。小児科常勤医師数は1人が26.2%で最多だった。IGの投与方式を決めている施設は932ヶ所(51.1%)であった。それらの施設で投与総量を2,000mg/kgとしている割合が71.0%であり、内容は400mg/kg 5日間投与が60.5%、2,000mg/kg 1日投与が5.2%であった。IGを全員に投与する施設は741ヶ所(40.6%)で、一部の患者のみに投与する施設で原田のスコアを用いている施設は23.0%であった。CAGを施行する施設は164ヶ所(8.9%)であった。小児科病床数別観察では、病床のない施設は新規患者がいない割合が89.9%と最多だった。IGの投与方式を決めている施設は10〜24床で78.2%であった。また投与量について、2,000mg/kg 1日投与は50〜99床で9.3%であった。IGを全員に投与する施設は、10〜24床が58.8%と最多だった。CAGを施行する施設は50〜99床で35.5%であった。IGの投与方式を決めている施設は、CAGを施行しない施設の59.1%であるのに対し、施行施設では83.7%と高率だった。また、CAGを施行しない、または患者数10例未満の施設ではほぼ半数でIGを全員に投与していた。
月齢6−8か月に見られた川崎病低罹患率の原因に関する考察
埼玉県立大      ○柳川 洋
自治医大公衆衛生    屋代真弓、中村好一
[目的]川崎病の年齢別罹患率は、通常0歳代の後半にピークを有する一峰性のカーブを示していたが、第15回川崎病全国調査で報告された1997年及び1998年の患者では、両年とも月齢6−8か月にくぼみが見られ、前後の月齢群(3−5か月と9−11か月)よりも有意に低い値であった。その現象が偶然のものか或いは何らかの疫学的な要因によって生じたものかを明らかにし、原因究明への手がかりを得ることを目的とする。
[方法]第15回川崎病全国調査で報告された患者のうち初診時年齢が1歳未満のもの3795人を対象に、初診年次、初診月、患者の出生年月、患者の住所などの要因と月齢別罹患率との関係を比較した。 
[結果] 1997年、1998年の2年間に報告された患者では、月齢6−8か月の罹患率が前後の罹患率よりも低く、1997年では月齢3−5か月の202.5(人口10万対)に比べて-10.0%、月齢9−11か月の189.1に比べて-3.6%、1998年では月齢3−5か月の201.9に比べて-15.7%、月齢9−11か月の206.6に比べて-17.6%と明らかに低く、月齢6−8か月に谷を作った二峰性のカーブを示していた。  出生年月別、住所地別、初診年次別によってこの傾向に差は見られなかった。しかし、初診月と罹患率の関係を見ると、初診月が1−3月および4−6月の者は月齢9−11か月、初診月が7−9月および10−12月の者は月齢3−5か月の罹患率が高く、初診の時期によってピークに6か月間のずれが見られた。
[考察]今回の調査で初めて観察された月齢6−8か月における罹患率の谷は偶然の誤差によるものではなく、川崎病疫学像に注目すべき変化が生じたと考えられる。今回の解析から、初診時の季節により年齢のピークが6か月間ずれたために二峰性になったことが明らかになった。その原因として、発病の季節により、病原体の性質が異なっていたことが考えられる。
川崎病発病1か月後に心後遺症を残す要因の解析
自治医科大学公衆衛生  ○大木いずみ 屋代真弓 中村好一
北京大学公衆衛生学部   張拓紅
埼玉県立大学       柳川洋
【目的】急性期(1か月以内)に川崎病心後遺症を有する者を対象に、性、年齢、急性期の臨床所見、ガンマグロブリン治療方式などと、1か月後の心後遺症との関係を明らかにする。
【方法】第15回川崎病全国調査より、急性期に心後遺症が見られた患者2,611人のうち第8病日までにガンマグロブリン治療を開始し、総投与量1,000mg/kg(500mg/kg以上1,500mg/kg未満)の者635人と2,000mg/kg(1,500mg/kg以上2,500mg/kg未満)の者1,293人の合計1,928人を対象に、性、年齢、初発・再発、急性期の臨床所見(ヘマトクリット、白血球数、好中球数)、治療方法(ガンマグロブリンの総投与量、治療開始病日)を観察し、急性期と1か月後で比較した。1か月後の心後遺症の有無を目的変数とし、性、年齢、初発・再発、急性期の臨床所見、ガンマグロブリンの総量、開始病日を説明変数として多重ロジスティックモデルを用いて1か月後に心後遺症を残す危険因子の解析を行った。
【成績】全国調査のベースラインデータでは、急性期における心後遺症ありは全報告患者の20.1%(2,611人)、1か月後心後遺症では7.0%(912人)であった。本研究で対象にした急性期に心後遺症がある1,928人では、1か月後では593人(30.8%)に心後遺症があった。1か月後に心後遺症がある患者は男が多く、年齢では1歳未満と5歳以上に多かった。1か月後に心後遺症を残す危険因子として、再発の有無(あり)、好中球数の高値(9,100/mm3以上)が観察された。しかし、性(男)、年齢(1歳未満)、ヘマトクリットの低値(32.5%未満)、白血球数の低値(12,000/mm3未満)、総ガンマグロブリン投与量(2,000mg/kg/1,000mg/kg)、ガンマグロブリン治療開始日(第4病日以内/第5病日以降第8病日以内)は有意な項目として観察されなかった。