15回の全国調査で報告された川崎病死亡の疫学特性
自治医大公衆衛生   ○屋代真弓、中村好一、大木いずみ
埼玉県立大       柳川 洋
[目的]1970年に第1回の川崎病全国調査を実施して以来、今までに15回の調査を実施してきた。本研究はこれまでに把握したすべての死亡例449人を対象にして疫学像を明らかにし、川崎病の生命予後の改善に寄与した要因を明確にすることを目的として実施した。 
[方法]第1回調査から1998年末までの累積患者数は、合計153,803人(男89,272人,女64,531人)であった。調査時に死亡として報告された者は409人であったが、生存として報告された患者のうち40人の死亡がその後の追跡調査により確認された。今回これらの死亡患者449人について性、年齢、診断別致命率を比較した。また、ガンマグロブリン(GG)治療の普及と致命率との関係をみるために、GG治療の普及前(1982年以前)、移行期(1983-91年、GG投与率が急上昇した時期)、普及後(1992年以降、GG投与率が80%を超えた時期)の3時点に分けて致命率を観察した。さらに初診から死亡までの期間および、致命率の地域差についても比較した。
[結果とまとめ]死亡例449人の致命率は0.29%、男/女比は1.5であった。年齢別致命率は、1歳未満で高く1歳以上の各年齢群の3.9倍であった。診断区分別にはほとんど差はみられず、GG普及との関係では、普及にともない明らかな減少がみられた。致命率の年次推移をみると、1973年までは1%以上の高率を示したが、その後急速に低下、1985年以降は0.2%以下の低率を維持していた。性・初診時年齢別の致命率は、男女とも0-2月の若年児が最も高く、1歳を超えるまで月齢が進むにつれて急速に減少していた。GG治療普及後の致命率は1歳未満で著明に低下し、特に0-2月では普及前に比べて8分の1以下であった。GG普及時期には地域差があったが、どの地域も普及後は致命率は激減していた。初診から死亡までの期間が1年以上の患者は11.5%であった。
川崎病による巨大冠動脈瘤の現状と危険因子:第15回川崎病全国調査より
○中村好一,屋代真弓,大木いずみ,谷原真一,尾島俊之(自治医大公衆衛生)
柳川洋(埼玉県立大)
[目的]第15回川崎病全国調査で報告された巨大冠動脈瘤を合併する症例の検討を行い,危険因子を明らかにする.
[方法]1997〜1998年の患者を対象とした第15回川崎病全国調査では69人が巨大冠動脈瘤を併発するとして報告された.このうち56人は第9病日までに報告医療機関を受診していた.これらの患者の特徴を明らかにすると共に,同一医療機関から報告された巨大瘤を有しない患者を対照群として,条件付きロジスティックモデルを用いてオッズ比(OR)とその95%信頼区間(95%CI)を計算することにより,危険因子の量的評価を行った.
[結果]56人の患者のうち48人は急性期から巨大瘤を有していた.急性期には巨大瘤がなかった8人も急性期には冠動脈瘤(7人)や心筋梗塞(1人)があり,急性期には心障害がなく1か月以降に巨大瘤が発生した例はなかった.また,1か月以降はすべての症例で巨大瘤を有していたが,これに加えて4例では他の冠動脈瘤,冠動脈狭窄,弁膜病変を合併していた.男(OR=2.92,95%CI:0.99−8.61),乳児(/1〜2歳,OR=2.06,95%CI:0.81−5.24),好中球割合(10%上昇,OR=1.39,95%CI:1.00−1.93),第8病日以降のγグロブリン療法開始(/4〜7病日,OR=3.48,95%CI:0.65−18.6),γグロブリン追加投与(OR=43.6,95%CI:14.4−131)などが,すべての項目を調整した上でも高いオッズ比を示した.しかし,追加投与は巨大瘤の原因ではなく,持続する発熱や炎症反応に起因する交絡因子と考えられる.γグロブリン投与(/非投与)や総量2500mg/kg以上の大量投与は単変量解析では高いオッズ比を示したが,多変量解析では巨大瘤発生に影響を与えていなかった.大量1回投与(2日にまたがるものも含む)はリスクを有意に低下させていた(OR=0.12,95%CI:0.02−0.85).同胞例,白血球数上昇も単変量解析では有意なORを示したが,多変量解析ではリスクとしては観察されなかった.
川崎病全国調査成績から見た川崎病不全型の検討
日赤医療センター小児科:建部俊介、村松一洋、土屋恵司、
今田義夫、麻生誠二郎、薗部友良
自治医大公衆衛生学:屋代真弓、中村好一 埼玉県立大学:柳川 洋
目的:最近の4回の厚生省川崎病研究班全国調査成績を分析して、冠動脈障害を中心に川崎病不全型の実態を明らかにする。
方法:第12回から第15回までの4回の全国調査成績を分析した。まず不全型を容疑例(狭義の不全型)だけに限らず、冠動脈障害の有無に関わらない4症状以下の例を広義不全型として定義した。すなわち広義の不全型とは容疑例と不定形例(あるいは確実B)を合わせたものである。これらを5症状以上の確実例(あるいは確実A)と比較した。
結果と考察:全例は48,176例で、不定形例は全体の3.7%、容疑例は11.3%、4症状以下の広義の不全型は全体の15.0%であった。各回ごとの各群の発生頻度はほとんど差がなかった。男女比は、全体では1.39であったが、5症状例は1.41、不定形は1.42、容疑例は1.23であり、容疑例では典型例に比して女性の頻度が高かった。 冠動脈障害に関して、急性期の分析は15回分だけであるが、全体は20.1%、5症状以上は19.8%、不定形例71.1%、容疑例は6.6%、4症状以下例は21.7%であった。後遺症は第15回より調査方法が変わっているがまとめて集計した。全体は11.4%、5症状以上は11.5%、不定形は37.3%、容疑例は1.8%、4症状以下例は10.8%であった。すなわち、容疑例での冠動脈障害発生頻度は低いものの、4症状以下の例の発生頻度は5症状以上の群に比して、ほとんど同じであった。後遺症の年齢分布を見ると、どの群も6ヶ月未満と5歳以上の例に多く見られた。検査成績を見ると、どの値も5症状以上例は容疑例に比して変化が大きいが、4症状以下の例は5症状例と大きな差がなかった。 結論として、4症状以下の広義の不全型例でも冠動脈障害、血液検査所見ともに、5症状以上の例と大きな差が無く、4症状以下であるから軽症とはいえなかった。