川崎病における末梢血好中球のアポトーシス抑制のメカニズムに関する検討
―特にFas/FasL系を中心として―

防衛医科大学校小児科
○辻本 拓 竹下誠一郎  中谷圭吾 徳富 智明
川村陽一 関根勇夫
【背景】我々は前回の本研究会において、川崎病(KD)の急性期の末梢血好中球のアポトーシスは、他の疾患群に比較して有意に抑制されていることを報告した。好中球のアポトーシスは主にFas(CD95)を介したシグナル伝達を介して調節されている。 【目的】川崎病の末梢血好中球のアポトーシス抑制のメカニズムを、Fas(CD95)/FasL系を中心に検討する。
【対象】川崎病(KD,25例)の急性期(入院時)、回復期(第21病日以降)、対照群として健常児(20例)、ウイルス感染症(20例)、細菌感染症(20例)。
【方法】末梢血好中球を分離し、10%FCS含有のRPMI1640で培養後、0,24,48時間において、Annexin ・とpropidium iodide(PI)による蛍光染色を用い、アポトーシス細胞の出現率をFlow cytometory法を用いて算出した。さらにFas誘導抗体(CH-11)と抑制抗体(ZB4)によるアポトーシス誘導効果を比較した。また好中球細胞表面のFas及びFasLの発現を測定した。
【結果】(1)KD急性期の好中球のFas発現は、回復期や他群に比較して有意に低下していたが、FasLの発現は有意差を認めなかった。さらにKD急性期のFas陽性率(%)とアポトーシス細胞出現率は有意の正の相関関係(P<0.01)を示した。(2)Fas抗体によるアポトーシス誘導実験では、KDと細菌感染症急性期の好中球は、他群に比較してCH-11に対して有意の 抵抗性を示した。
【考察】今回の検討により、KD急性期の好中球のアポトーシス抑制の原因として、Fasを介したシグナル伝達の抑制が示唆された。
川崎病の末梢血Tリンパ球内CTLA-4の解析
山口大学小児科
○ラビカ アンワ、松原知代、藤原元紀、市山高志、 古賀まゆみ、古川 漸
<目的>私共は川崎病末梢血では monocyte/macrophage の活性化が重要で、Thelper1タイプTリンパ球は免疫不応答状態にあることをすでに報告した。今回は、CTLA(cytotoxic Tlymphocyte- associated molecule)-4 (CD152)について検討した。CTLA-4 は、CD28と同一のリガンドに結合しTリンパ球の活性化抑制する負のシグナルを伝達する分子である。resting Tリンパ球には発現せず、 活性化に伴って、細胞表面でなく細胞内に一過性に発現する。川崎病の末梢血Tリンパ球内CTLA-4の発現をフローサイトメトリーで解析した。
<対象および方法>川崎病10例について、急性期治療前、ヒト免疫グロブリン療法後および回復期に経時的にサンプリングした。正常対照は、ほぼ同年齢の健常小児10例。末梢血Tリンパ球中の細胞内CTLA-4の発現をPE標識抗CTLA-4抗体(Immunotech社)を用い、Permeabilizing solution(日本ベクトンディッキンソン社)を使用してフローサイトメトリーで解析した。細胞表面抗体としてPerCP標識抗CD3抗体、FITC標識抗CD4抗体を用いた。
<結果およびまとめ>川崎病急性期の末梢血CD3+および CD4+Tリンパ球内CTLA-4の発現は回復期および健常小児に比し増加していた。伝染性単核症などのウイルス感染症および敗血症などの細菌感染症と比較し報告する。
川崎病急性期血清免疫抑制酸性蛋白と各種サイトカインの関連について
東邦大学第二小児科 ○二瓶浩一、池田周子、細野稔彦、青木継稔、四宮範明
<はじめに>免疫抑制酸性蛋白は坦癌状態や各種の炎症で上昇する事が知られており、急性相反応物質ながら炎症抑制作用を有する点がユニークな物質である。川崎病急性期にも上昇し、冠動脈病変合併症例において有意に高値をとることは既に報告した。今回、川崎病急性期血清免疫抑制酸性蛋白と各種サイトカインの関連について検討した。
<対象と方法>第7病日以内で免疫グロブリン療法開始前の川崎病患児16名を対象とした。血清免疫抑制酸性蛋白値は免疫比濁法にて測定した。各種血漿サイトカインは、TNFα、IL1β、IL6、IFNγ、TGFβ1を同時期に測定し、関連を検討した。これらサイトカインはELISAキットにて測定した。
<結果および考察>対象症例中冠動脈病変を残した症例はなかった。血清免疫抑制酸性蛋白値は1190±223μg/mlであった。各種サイトカインの測定では、IL6:39.5±43.1pg/ml、IFNγ:128.3±141.7pg/ml、TGFβ:29.36±26.54ng/mlでありTNFαおよびIL1βは測定感度以下であった。免疫抑制酸性蛋白とこれらサイトカインの相関の検討では、IL6:r=0.24,p=0.33、IFNγ:r=-0.09,p=0.81、TGFβ1:r=0.74,p=0.02であり、炎症性サイトカインとの相関は認められずTGFβ1と有意な相関を認めた。TGFβ1は抑制性サイトカインとして、各種炎症機序への関与が知られている。また癌の予後判定や重症度の評価など、免疫抑制酸性蛋白と類似した作用を有する。免疫抑制酸性蛋白およびTGFβ1は相互に関係して、川崎病急性期の炎症経過に関与している可能性が推測された。