急性期川崎病に対するウリナスタチン療法の有用性とその判定指標について
岐阜県立多治見病院 小児科
○中野正大  野田映子  上條善則  佐野洋史
 小久保義一 安藤光広  岩城利充  豊田桃三
<はじめに>経過中の血清アルブミン(Alb)値により、対象を2群に分け、ウリナスタチン(UTI)の投与効果とその判定指標を検討した。
<対象>1998年11月から2000年5月までに当科に入院した全ての第7病日以内の未治療の川崎病25症例
<方法>診断直後、または強く川崎病が考えられた直後から、UTI 5,000単位/Kgを輸液に溶解し、4時間毎(6回/日)に30分〜60分かけてCRPが1.0mg/dl未満になるまで点滴静脈内投与を継続した。UTIの一日最大投与量は5万単位×6回(30万単位/日)とした。有熱期は心断層エコー検査(UCG)、血清CRP・Alb・ChE、WBC・血液像(acute phase reactants−APR)、肝機能などの検査を毎日、解熱後は隔日に行った。経過中、最低Alb値が3.0g/dl以上であったA群と3.0g/dl未満を呈したB群に分類し、UTI投与後の体温やAPRの変化とUCG所見を検討した。
<結果>1)A群は15例(60%)でUTI投与開始後1〜2日以内に発熱とAPRの改善傾向が認められた。B群は10例(40%)でUTI投与開始後も平均約3日間は発熱、APRの改善が認められず、その後次第に正常化傾向を呈した。2)A群、B群ともにUCG上、冠動脈拡張は1例にも認められなかった。3)B群の中でGOT、GPT、LDHの異常を呈した例では、UTI投与開始後それらはAPRに先行して改善が認められた。
<結語>A群においては、解熱効果やAPRの改善が、UTI投与効果の指標として有用であった。一方、B群においては、それらは必ずしも有用な指標ではなく、UCG所見が最も有用であったが、GOT、GPT、LDHの異常例では、それらの改善効果が有力な指標であった。発病早期からUTIを十分に投与することにより、B群のように発熱、APRの速やかな改善がたとえ得られなくても、冠動脈病変を防止することができた。
ガンマグロブリン超大量療法とウリナスタチン早期併用療法の
治療効果に関する検討

防衛医科大学校小児科
○川村 陽一、竹下誠一郎、中谷 圭吾、辻本 拓、徳富 智明、関根 勇夫
【はじめに】近年、活性化好中球による_管障害が注目されており、好中球由来のエラスターゼは最も強力な_管内皮細胞障害性因子であると報告されている。川崎病の病初期において好中球数は増加し、好中球エラスターゼの産生が亢進しており、その阻害作用を有するUlinastatin(UTI)を早期から使用する方が有効であると考えられる。
【目的】ガンマグロブリン静注(IVIG)超大量の単独療法と、IVIG超大量療法にUTIを早期から併用した場合の治療効果について、臨床所見、検査所見等を比較検討した。 【対象】1996年から2000年の間に防衛医大病院小児科に入院し、IVIG超大量療法(1g又は2g/kg/回)を施行した川崎病の患児76名を2群に分類した:IVIG単独群(n=43)及びIVIG+UTI早期併用群(n=33)。UTIは5000U/kg/回×3/日で入院時より開始し、IVIG追加時には×6/日に増量した。
【結果】IVIG開始時の両群の主要症状、検査所見等に有意差を認めず、治療開始時の重症度に差を認めなかった。発熱期間、CRP陰性化までの期間、皮膚の膜様落屑までの期間等に両群間に有意差を認めなかった。しかし、IVIG単独群では7日以内に1mg/dl未満になった症例が43例中17例(39.5%)であったのに対し、IVIG+UTI早期併用群では33例中21例(63.6%)に認められた(χ2独立性の検定,p<0.05)。一方、冠動脈病変(CAL)発生に関してはともに一過性拡大を2例、瘤を1例ずつ認め(ともに径5 ̄6mm)、両群間に差を認めなかった 。
【結語】IVIG+UTI早期併用群ではIVIG単独群に比較して、治療開始後7日以内にCRPが1mg/dl未満に低下する確率が高い傾向が認められた。しかし、CAL発生率に差を認めず、IVIG+UTI早期併用の治療効果に関しては今後さらに詳細な検討が必要である。
ガンマグロブリン超大量投与法と早期ウリナスタチン療法の併用効果の検討
獨協医科大学小児科(内分泌)
◯沼田道生,平尾 凖一,渡辺 慎,安藤 保,有阪 治
〈はじめに)前回の本研究会で,川崎病にγグロブリン(IVGG)超大量投与法にウリナスタチン(UT)療法を組み合わせた治療法が優れていることを発表した。一方,UT療法は早期開始が良いとされている。今回は,早期発見例にUT療法から開始し,第5又は6病日にIVGG超大量投与法を行なうプロトコールを作製し,前回報告の診断後直ちに1g/kgの投与を行ない,追加投与必要例にのみUTを併用する方法と比較したので報告する。
〈対象及び方法)第7病日以内にIVGG療法が開始された川崎病患者64例を対象とした。平成6年12月から平成10年12月に受診した39例は治療法-1で治療した(1群)。平成11年1月から平成12年6月に受診した25例は治療法-2で治療した(2群)。治療法-1:診断後直ちにIVGGを1g/kg1回投与する。治療開始48時間後に効果判定する。解熱し,CRPの改善傾向があればIVGG療法は終了とする。効果不十分例はIVGGを追加し,同時にUTを5000u/kgx3/d投与する。治療法-2:診断後直ちにUTを投与する。第5又は6病日にIVGGを1g/kg1回投与する。治療効果は治療法-1と同様に判定する。効果不十分例はIVGGを追加し,UTを倍量に増量する。冠動脈病変の基準として,経過中の心エコー検査で冠動脈径が3mm以上に拡大した例を冠動脈病変ありとした。有意差検定は,χ2検定,Fisher直接確率法,Mann-Whitney testを用い,p<0.05を有意差ありとした。
〈結果)(1)1群での追加投与例は12例,2群では11例だった。(2)冠動脈病変は1群と2群の追加投与例で各々3例と2例だった。(3)発熱,CRPの陰性化までの期間に差はなかった。
〈結論)川崎病にUTを病初期に投与し,IVGGを追加する方法は,診断時にIVGG療法を行ない効果不十分例にUTを併用する方法に比べて優る点は見い出せなかった。