免疫グロブリンの初回投与量と投与開始病日とからみた冠動脈障害
―第15回全国調査成績から―

関西医科大学附属洛西ニュータウン病院小児科  ○荻野廣太郎
自治医科大学保健科学 屋代真弓、中村好一
埼玉県立大学     柳川 洋
【はじめに】今回、第15回全国調査成績を基にして、免疫グロブリン(IVIG)の初回投与量と投与開始病日とからみた冠動脈後遺症(CAL)について検討を行った。
【対象および方法】全国調査で集められた12,966症例の内、免疫グロブリンの投与が確認された10,978例を選び、重複が明らかな90組の結果を一本化し、解析対象症例(10,888例)とした。急性期死亡は4例で、回復期(後遺症期)死亡は7例であった。初回投与量(mg/kg)はA:1-250, B:251-350, C:351-450, D:451-950, E:951-1500, F:1501-2500, G:2501以上に分けた。また投与開始病日は第1+2病日, 3〜9の各病日, 10病日以上とした。なお今回は心後遺症の内、CAL(死亡を含む)のみを取り上げ、拡大以上の頻度を回復期(対象症例10,884例)で検討した。
【結果】(1)初回投与量(mg/kg)別にみたCAL:A群6.8%、B群8.4%、C群6.7%、D群7.1%、E群7.5%、F群5.7%、G群7.1%であった。(2)投与開始病日別にみたCAL:第1+2病日8.2%、3病日9.1%、4病日6.8%、5病日5.9%、6病日5.7%、7病日5.9%、8病日7.5%、9病日10.9%、10病日以上21.5%であった。(3)投与開始病日別にみた初回投与量の分布:初回投与量が951mg/kg以上の割合は、21.4%から24.0%の間にあり、早期投与例(1+2:23.0%, 3:24.0%, 4:23.3%)で低い事実はなかった。(4)初回投与量別・投与開始病日別にみたCAL:1501-2500mg/kg群の特徴は、第4病日以内の投与開始例ではCALの頻度は高い、第6〜9病日投与開始例で巨大瘤はない、第8, 9病日開始例でCALの頻度が低い、ことであった。
【結語】第4病日以内と第10病日以降とに投与を開始した群では、超大量投与を行ってもCALの頻度は高い。初回投与量は1501〜2500mg/kg が望ましく、特に投与開始が第8, 9病日と遅れた症例で巨大瘤の形成を抑制できる可能性がある。
3病日以内に入院した川崎病のグロブリン療法
名古屋第二赤十字病院 小児科
○岩佐充二、福田革、横山岳彦、安藤恒三郎
本院ではハイ・リスクになった時点でグロブリン(GG)投与を開始している。3病日以内に入院した症例のGG投与は待期しても良いのかどうかを検討した。
ハイ・リスク児にGG2g/kgの20時間投与を開始した94年6月から2000年4月までに8病日以内に入院した定型190例のうち、入院時冠動脈拡張(CAL)の無かったのは185例であった。1病日に入院したのは5例、2病日は17例、3病日は37例、4病日から8病日は126例であった。142例/185例(77%)にGGを投与した。CALは13例/185例で、そのうち2例はGG投与無しで最大径3.0mm、3.1mmの一過性拡張を認めた。ハイ・リスクでGG投与したのは109例(男70例、女39例)で、CALは11例ですべて男児であった。ロウ・リスクでGG投与した33例ではCALは無かった。1〜3病日(2.6±0.8)の早期に入院したハイ・リスク男児は22例であったが、ヴェノグロブリンを投与した1例と、診断基準4/6+CALでGGを投与開始した1例を除く20例で検討した。これら20例は4.5±1.6病日にハイ・リスクになり、4.7±1.4病日にGGを2g/kg投与開始していた。そのうちベニロンを投与した8例中7例にCALを認めたが、グロベニンを投与した12例ではCALは無かった(p < 0.001)。また早期入院例の追加投与はベニロン例では6/8、グロベニン例では3/12で、ベニロン例は有意に追加投与を必要とした。4〜8病日に入院したハイ・リスク男は48例であった。ヴェノグロブリンを投与した1例と、16病日にGGを投与開始したCAL有りの1例を除く46例で検討すると、ベニロンを投与した23例中1例にCALを認め、グロベニンを投与した23例中1例にCALを認めた。
早期に入院した男児に入院してすぐにベニロンを投与したらCALが減るかどうかは不明であった。1〜3病日の早期に入院した男児にハイ・リスクになるまで待機してグロベニンを投与しても良い結果が得られた。
ガンマグロブリン療法の開始病日別にみた治療成績
日本大学医学部小児科
○谷口和夫、金丸 浩、山菅正郎、 鮎沢 衛、
 唐澤賢祐、能登信孝、住友直方、岡田知雄、原田研介
【目的】ガンマグロブリン療法の開始病日によって、経過に差が生じていたか検討する。
【対象と方法】昭和59 (1984) 年から平成11 (1999) 年の16年間に日本大学板橋病院小児科に入院し、分割投与によるガンマグロブリン静注療法を開始した急性期川崎病302例について、投与開始病日ごとに、冠動脈病変合併率、入院日数、退院病日、ガンマグロブリン総投与量を調べた。
【結果】IVIGの開始病日ごとに、例数、平均入院日数、平均退院病日、冠動脈障害合併例数及び合併率(%)およびガンマグロブリンの総投与量を示す。
3病日 24例 14.0±6.2日 16.0±6.1日 1例(4.2%)* 1.48±0.9g/kg
4病日 44例 14.5±6.8日 17.0±7.2日 5例(11.4%) 1.15±0.6g/kg
5病日 91例 15.0±8.3日 18.2±8.2日 12例(13.2%) 1.28±0.7g/kg
6病日 62例 14.1±5.6日 18.7±6.1日 4例(6.5%) 1.35±0.7g/kg
7病日 50例 16.1±10.8日 20.7±11.1日 5例(10.0%) 1.37±0.7g/kg
8病日 14例 14.3±7.0日 20.0±7.5日 1例(7.1%) 1.13±0.8g/kg
9病日 10例 14.6±6.9日 22.5±7.5日 2例(20.0%) 1.73±1.0g/kg
10病日 7例 14.0±6.8日 19.8±4.1日 3 例(42.86%)** 1.22±0.4g/kg
 入院日数はいずれの病日どうしも有意差はなかった。退院病日は7病日の治療開始群が3病日の群より有意に遅かった。総投与量はいずれの病日どうしも有意差はなかった。冠動脈病変合併率は、3病日群が4,5,7,9,10病日群よりも有意に少なく(*)、10病日群が3から8病日のいずれの群よりも有意に多かった(**)。
【結論】自施設における分割投与による後方視的検討では、3病日に治療を開始することで入院日数の短縮や退院の早期化は認められなかったが、冠動脈病変の合併を減少させる可能性があった。3病日に治療を開始することでIVIGの投与量が増加したevidenceは認められなかった。
γグロブリン投与開始日の検討
久留米大学小児科
○菅原洋子、牟田広実、古井潤、石井正浩、加藤裕久
厚生省川崎病研究班による川崎病診断の手引きでは、主要症状の1つに、5日以上続く発熱との項目があるが、4病日以内に5症状、もしくは発熱以外の4症状を認め、治療を開始する例も最近認められるようになった。
【方法】1997年1月より2000年3月までに、当科で初回治療よりおこなった川崎病児90例について、γグロブリン投与開始日とその治療効果につき、検討した。
【結果】4病日以内にγグロブリンを投与した51例をGroupA(2病日3例、3病日12例、4病日36例)、5病日以降9病日以内にγグロブリンを投与した39例をGroupBとした。γグロブリン投与量は、原田のスコア4点以上は2g/kg(GroupA 32例、GroupB 27例)とし、3点以下は1g/kg(GroupA 19例、GroupB 12例)とした。初回投与に反応せず追加投与を有した者は、GroupA 12例(24%)、GroupB 5例(13%)とGroup Aに多い傾向にあったが統計的有意差は認めなかった。また、冠状動脈病変はGroupA 3例(6%)、GroupB 4例(10%)に認めたが、両者間には統計的有意差は認めなかった。総有熱期間はGroupA 5.5±2.1日、GroupB は7.3±3.0日と、有意にGroup Aが短かった(p<0.05)。
【結語】早期のγグロブリン投与は、5病日以降のγグロブリン投与に比べ、冠状動脈病変の発生頻度には差がなく、総有熱期間は有意に短縮できた。