川崎病における好中球を中心とした病態について
防衛医科大学校小児科
竹下誠一郎、中谷圭吾、辻本拓、川瀬博子
川村陽一、徳富智明、関根勇夫
【背景】川崎病(KD)急性期において白血球(特に好中球)数増加が認められ、冠動脈病変(CAL)発生のrisk factorの1つとされている。また、KD急性期の好中球機能は亢進しており、最近ではKD急性期のCALの部位に好中球が相当数浸潤していることが病理的にも確認され、KD血管炎に好中球が関与していることが示唆されている。今回は、好中球を中心としたKDの病態に関する我々の研究結果をまとめて報告する。
【結果】 KD急性期において・中毒顆粒や細胞質内空胞を伴うtoxic neutrophilが末梢血中に多数出現し、CAL+群ではその出現率が高い(Acta Paediatr Jpn 1990;32: 508)、・好中球細胞表面にはCD14 receptorを介してLPSが結合し、敗血症に比較してprotease(特にelastase)を過剰に産生している(J Infect Dis 1999;179:508)、・好中球細胞表面のFc_ receptor(Fc_R)・及び・の発現は増加する一方Fc_R・の発現は低下し、好中球機能の亢進を反映している(Clin Exp Immunol 1999;117: 418)、・好中球細胞表面のCD14 receptor及びmRNAの発現は増加し、血中soluble CD14値は血管炎のマーカーの1つである(Clin Exp Immunol 2000;119:376)、・末梢血好中球のapoptosisは他の疾患群や健常児に比較して優位に抑制され、寿命が延長している(日児誌 2000;104:953)。
【考察及び今後の展望】近年、活性化好中球を介した血管内皮細胞障害が注目されており、KD血管炎においても活性化好中球自体及びこれらの細胞から分泌されるtoxic mediatorがその病態に深く関与することが示唆される。その病態解明は、KDの原因究明に寄与するのみならず、新たな治療法の確立に役立つと考えられる。
川崎病とスーパー抗原性毒素症候群
千葉大学医学部小児科 寺井 勝,安川久美,地引利昭,浜田洋通,本田隆文,小穴慎二
千葉市立海浜病院小児科 中島弘道,黒崎知道
国立小児医療センター小児生態研究部 阿部 淳
 川崎病の病因としてスーパー抗原説が提唱されて以来,ブドウ球菌の出すTSST-1(Leung)や溶連菌のSPEA(Leung),SPEC(塩野義研究所)が病因候補として報告されてきた.しかしながら,いまだに確固たる科学的証拠に乏しいのが現状である.
 川崎病の病因と断定するには,先進国に多発すること,アジア人に多いこと,MCP-1,IL-8などケモカインのupregulationを説明しなくてはならない.細菌毒素が原因と仮定すると,毒素の侵入が引き金となり,ケモカイン,サイトカインを介した一連の全身性炎症反応が惹起されるものと考えられる.そこには,当然個体側の素因も関わってくる.たとえば,症状の重症度に関わる因子である.溶連菌感染が劇症化するかは,個体側の抗体保有の有無と関連があるという報告がみられる.さらに,マラリアとTNFとの関連の如く,個体側のサイトカイン産生に関する個体差も考えなくてはならない.
 本シンポジウムでは,これらスーパー抗原説を再度検証し,我々の考え方を述べる.
1) ブドウ球菌毒素によって発症した小児例の臨床症状,体内からのブドウ球菌の検出,ブドウ球菌産生毒素に対するT細胞受容体の応答,毒素特異的抗体の推移を自験例について報告する.
2) ブドウ球菌毒素と川崎病の関連について検証する.
3) 最後に,個体側の素因のひとつであるMCP-1調節因子の遺伝子多型について報告する.
川崎病発症への溶連菌外毒素(SPE-C)の関与について
和歌山県立医大小児科1)、 同 第一病理 2) 塩野義医科学研究所3)
○鈴木啓之1)、武内 崇1)、上村 茂1)、吉川徳茂1)、
 村垣泰光2)、吉岡 健3)、鈴木隆二3)
1) 川崎病発症時のSPE-Cへの応答と臨床データとの比較検討
  川崎病患児の末梢血中のT細胞レセプター(TCR)レパトアを解析した結果Vβ鎖のVβ2.1とVβ6.5に入院時と回復期に有意な差を認めること、またstreptococcal pyogenic exotoxin A,C(SPE-A,SPE-C)抗体の上昇について第19回本研究会で報告した。今回はさらに症例数を多くして、患児のTCRレパトア分析結果、SPE-C抗体価と臨床経過も合せて比較検討した。94年10月から99年12月までに当科と関連病院に入院した川崎病54例(男女=29:25、2か月〜7歳7か月、平均1歳11か月)を対象とした。TCRレパトア分析結果からVβ2.1とVβ6.5陽性T細胞が有意な増加を認めたか否かで対象症例を分類し、これらの群間で症状検査データ、冠動脈障害出現頻度などの臨床経過について比較検討し報告する。
2) 川崎病患児血清中の自己抗体の検討
  川崎病発症時のTCRレパトアは大部分がスーパー抗原であるSPE-Cに暴露された形をとることを示したが、川崎病血管炎発症の機序はまだ不明である。今回、我々はスーパー抗原によって産生誘導が生じるとされる自己抗体を検索した。現在まで既に抗好中球細胞質抗体(ANCA)や抗血管内皮細胞抗体(AECA)などが報告されているが、特定の自己抗体と川崎病血管炎発症との因果関係はまだ確立されていない。川崎病急性期患児の血清中に血管壁(特に冠動脈壁)構成因子に対する自己抗体が存在するか否かを検索し、若干の知見を得たので川崎病血管炎の発症機序との関連について報告する。