44.川崎病のクリニカルパス導入について
市立岸和田市民病院小児科 秦  大資
 クリニカルパス(CP)は米国において、病院経営の効率化と医療の質保証のツールとして医療界で用いられ始め、近年、本邦においても各種疾患の標準管理スケジュールとして効果をあげている。しかし、小児科領域は、その疾患特性ゆえにCP導入の最も遅れている分野である。
 今回、我々は、過去5年間に当科入院となった川崎病78例の臨床経過データー(中央値で入院第4病日、解熱第7病日、CRP陰性化第14病日、入院日数16日間)に基づき、川崎病のCPを作成した。γグロブリンの使用法については、1g/Kg/日を用い、反応不良例には2日後、同量追加投与としたが、重症例では、最初から2g/kg/日の投与を行う方法をとった。
 本年2月以降、当科に入院した6例の川崎病患者に実際にこのパスを導入し、チーム医療の推進、在院日数の短縮、患者家族の満足度等において、有効な結果が得られた。重症度の判定、治療法の選択の問題、今後の改良点等の課題を含め報告する。
45.急性期に欠落していた症状に関する検討
日本大学医学部小児科 鮎沢  衛,宮下 理夫,谷口 和夫,金丸  浩,
山菅 正郎,唐澤 賢祐,住友 直方,山口 英夫,
泉  裕之,岡田 知雄,原田 研介   
 急性期に欠落する主要症状がある場合に、予後判定に有用な情報になるか検討した。対象は、1980から1999年の20年間に自施設へ入院した川崎病614例中、少なくとも1症状が欠落 していた 339例(55.2 %)で、男212例、女127例 (男女比1.67)であった。平均年齢は1.9±2.0歳で6症状が揃った275例の2.6±2.2歳よりも有意に小さかった。各主要症状の欠落例数は、発熱:1例(0.2%)、急性期の四肢末端の変化:82例(13.4%)、発疹:32例(5.2%)、眼球結膜充血:34例(5.5%)、口唇、口腔所見:55例(9.0%)、頚部リンパ節腫脹:211例(34.4%)であった。それらの冠動脈障害発生率は、それぞれ100%、13.4%、6.3%、9.1%、25.5%、13.7%で、口腔症状がない例は発疹がない例に比べて冠動脈障害が多かった。年齢層による特徴も検討する必要がある。
46.川崎病症例の長期予後 〜18歳に到達した症例についての検討〜
倉敷中央病院心臓病センター小児科 脇  研自,馬場  清,新垣 義夫,吉村真一郎
目的;川崎病に罹患した児の長期予後について検討すること。
対象;対象は川崎病に罹患した児で、当院にて検査を施行した児のうち18歳に達している児について調査を行った。
結果; 375名の川崎病罹患児(男/女;235/120)が18歳に到達しており、うち52名が現在も定期的にフォローアップをうけていた。年齢は18歳〜31歳(中央値;21歳)。発症時年齢は0.2〜11.8歳(中央値;1.8歳)であった。38名(10%)において初回検査で冠動脈病変が認められ、うち10名(26%)はその後消褪、12名(32%)において狭窄病変へと進行した。冠動脈以外の動脈瘤は3名に認められた。心筋梗塞は5名(1%)に見られ、巨大冠動脈瘤の1名は18歳の時歩行中に突然死した。てんかん発作、急性白血病がそれぞれ2名に発症していた。怠薬が4名にみられた。冠動脈病変合併例はその後も多彩な臨床像を呈すること、怠薬など年齢的要因による管理の難しさが明らかとなった。
47.北海道の川崎病患者の小児科から内科への移行状況(内科の立場から)
北海道川崎病研究会 村上 弘則,濱田  勇
 北海道内の内科、循環器科、心臓血管外科のある451病院に記名式アンケート調査を施行し41%の回答を得た。11施設(5.9%)のみ患者を経過観察し、7施設の60症例で詳細調査が可能であった。心血管障害保有者20例(33%)、非障害者40例が経過観察中であり、年齢は15〜36歳で15〜20歳が65%を占めた。発症時、冠動脈瘤は42%で、男が96%、回旋枝病変は少なかった。心筋梗塞は7%、虚血は15%で、1例はCABG、2例にinterventionが施行された。小児科より内科への移行時に患者の多くが脱落している可能性がある。
48.川崎病既往患者の長期経過観察
北海道川崎病研究会 太田八千雄,濱田  勇
 「川崎病既往患者の長期経過観察」について、全国299施設の小児科医へ平成12年12月にアンケート調査を行い、204施設(68%)より回答を得た。急性期・遠隔期に異常のなかった症例の74%、冠動脈軽快例の38%は経過観察を中止としていた。また障害例が成人に達した場合は43%が内科へ紹介されていたが、42%は小児科で経過観察されていた。全国アンケート調査の結果から、各施設により経過観察の基準・検査法の選択・患者への情報提供に違いのある事、成人例の内科移行が未だ充分進んでいない事、などが明瞭になった。調査結果を分析し、現状の問題点と今後の方向性について検討する。
49.経過観察終了が可能な川崎病既往児に対する管理への提言(案) 
近畿川崎病研究会管理に関する小委員会 篠原  徹,上村  茂,荻野廣太郎
清澤 伸幸,横山 達郎
 後遺症のない児(これをどのように定義するかも議論のあるところであるが)の管理をどのようにするかはここ数年の重要な課題であるにもかかわらず十分なコンセンサスが得られていない。近畿川崎病研究会(以下本研究会)ではこのような児の追跡方法に関する提言を行うべく小委員会を発足し、提言案を作成した。今回提示の案は初案を第25回本研究会で討論し改定したものである。本案をたたき台に全国的規模でこのような児の管理方法に対する一定のコンセンサスが得られればと考えている。本案は定期的に実施された急性期の冠状動脈エコー所見を(1)拡大性変化なし群、(2)急性期軽度一過性拡大群、(3)有意拡大群の3群に分類した上で(1)および(2)の一部については小学校入学時の検診をもって追跡を終了しようとするものである。また、本研究会の運営委員(40名)がこのような児の追跡をどうしてきたかのアンケート調査も実施したのでその結果も呈示したい。
50.冠動脈障害を認めなかった患児に対する
“川崎病カード”作成についての提案
近畿川崎病研究会管理に関する小委員会 荻野廣太郎,上村  茂,清澤 伸幸
篠原  徹,横山 達郎
【目的】冠動脈障害を認めなかった患児の急性期の情報をカード形式でまとめ、保護者・本人に情報を開示し、それを将来に正確に伝達すること。
【カード内容】<記載事項>表:氏名、性別、生年月日、発症日、発症時年齢、入院日、退院日。主要6症状の有無。急性期の治療内容。退院時の冠動脈エコー診断と他の心臓障害の有無。病院名と主治医名。裏:入院時から発症1年後までの冠動脈エコー所見と他の心臓合併症。冠動脈造影の有無。急性期以後の治療の必要性。生活管理等主治医の意見。<発行時期>第30病日前後もしくは発症後1年。<仕様>官製ハガキ大。厚めの着色紙。
【結語】このカードを保護者に手渡し保管を依頼する。転居時、入学時、さらに成人となったときに情報の伝達が正確に行える。残された最重要課題である冠動脈硬化症のリスクを考えるときにもこのカードは有用である。本研究会で書式を統一し、全国で同じカードが使用できることを希望する。
51.川崎病診断の手引き改訂案
旧厚生省川崎病のサーベイランスに関する研究班(班長:原田研介):川崎病診断の手引き改訂小委員会 薗部 友良,中村 好一,小川 俊一
鮎沢  衛,清沢 伸幸,上村  茂
石井 正浩,原田 研介
 川崎病診断の手引きは1984年以後改訂されていないので、その後の状況の変化に対応するために旧厚生省川崎病研究班では小委員会を結成して改訂を検討した。
 問題点を検討した結果、新たな手引きの原案を作成した。主な変更点を以下に記す。1.免疫グロブリン療法の普及などにより、治療により発熱期間が5日未満に短縮したと考えられる場合は、発熱が5日以上あったものとして取り扱うこと、2.川崎病不全型は臨床上重要である。不全型の定義は定まっていないが、少なくとも容疑例にも冠動脈障害が発生していることをより明確にすること、3.今までの主要症状の記載順序は特異性などが重視されてきた。今回覚えやすくするために体の上部から下部への順序とし、発熱、結膜充血、口唇口腔症状、発疹、四肢末端症状、頸部リンパ節腫脹に変更すること。
 今回この原案を提示し、その後厚生労働省川崎病研究班会議にて正式に改訂を行う予定である。