SEREX法による川崎病の病因因子の検討
山口大学医学部小児科学講座  金子 美保
岡山大学大学院医歯学総合研究科免疫学 小野 俊朗
山口大学医学部小児科学講座 松原 知代,古川  漸
岡山大学大学院医歯学総合研究科免疫学 中山 睿一
 川崎病は血管炎症候群である。疾患が初めて報告されて30年以上経った今でもその病因因子は明らかでない。本研究では,川崎病の発症機構およびその病態に関する免疫学的な要因を明らかにするために,IgG抗体認識癌抗原を同定する方法として開発されたSEREX法を応用し,ヒト臍帯血管内皮細胞由来のcDNAライブラリーを川崎病患者血清でスクリーニングし,患者血清中に産生された抗体が認識する自己抗原の同定を試みた。ヒト臍帯血管内皮細胞由来cDNAライブラリーの一次スクリーニングで62個の陽性クローンを得た。いくつかのインサートcDNAを解析した結果,複数の抗原処理に関する細胞内蛋白を同定した。現在,他の小児疾患あるいは健常児血清での反応を解析し,得られた抗原が川崎病特異的であるかを検討している。
川崎病と遺伝子
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター ゲノムシークエンス解析分野 尾内 善広
 我々は罹患同胞対法を用いた解析を行い川崎病の発症に関与する遺伝的素因の解明を試みている。1997年に開始した本プロジェクトの現在までの進行状況について報告する。

【方法】約10cm間隔に設定された343のマイクロサテライトマーカーの遺伝子型を50組の同胞症例について決定し,SIBPAL,MAPMAKER/SIBSにて連鎖解析を行った。連鎖の傾向のある領域には密にマーカーを設定し,領域の限局化を行った。
【結果】LOD score 2.33を示した染色体上の領域にマップされている候補遺伝子に対し,多型検出と患者・対照研究行った結果,川崎病と有意な相関を示す一塩基多型(SNP)を有する遺伝子を見いだした。この多型によりT細胞での発現量は影響を受けることから川崎病病態との関連が示唆された。
【今後の展望】更に検体数を増やし,連鎖,相関をより確かなものとするとともに,病態との関連を明らかにしたいと考えている。
川崎病 −21世紀への展望− 川崎病と病理
東邦大学医学部付属大橋病院病理学講座 高橋  啓
共同研究者:大原関利章,直江史郎 
 川崎病動脈炎は大単核細胞の集積が主体をなす増殖性炎症をその特徴とし,炎症早期から終演に至るまでCD68陽性macrophagesが病変内に多数出現する。しかし,水腫性疎開性変化に引き続く血管構築破綻時期には,他の炎症諸細胞と共に抗neu tro phil elastase抗体陽性の分葉白血球も血管壁内に相当数確認される。一方,CD3陽性リンパ球は17病日例をピークとするが30病日例でもmacrophagesと共に確認し得る。これに対し,CD20陽性リンパ球は早期病変でCD3陽性細胞と同程度の浸潤をみるが,その後速やかに消退する。病変部におけるB細胞についての記載はこれまで乏しい。この点に多少の検討を加え本症における動脈炎を理解する一助としたい。
川崎病の免疫病態
山口大学小児科 松原 知代,藤原 元紀,古賀まゆみ,市山 高志,古川 漸
 川崎病(KD)は,何らかの感染症を契機に起こった免疫反応により高サイトカイン血症が引き起こされ全身の炎症を呈する cytokine-associated dis easeと考えられている。KD末梢血マクロファージ/モノサイトとTリンパ球の活性化について以下の項目を中心に報告する。

1.モノサイト/マクロファージ
1) 血清中のTNF-alpha,IL-6などの炎症性サイトカイン
2)モノサイト/マクロファージの電顕,免疫電顕,免疫細胞化学的検討
3)モノサイト/マクロファージのサブポピュレーション
2.Tリンパ球
1)細胞内サイトカイン染色法によるIFN-γおよびIL-4産出Tリンパ球
2)Tリンパ球内CTLA(cytotoxic Tlymphocyte-associated molecule)-4発現
川崎病とスーパー抗原
国立小児医療研究セ・小児生態 阿部  淳,野上 浩子
都立八王子小児病院 野間 清司
千葉大医学部小児科 寺井  勝
千葉市立海浜病院 中島 弘道
国立療養所三重病院 中野 貴司
 黄色ブドウ球菌のトキシックショック症候群毒素(TSST-1),A群溶血性連鎖球菌の発熱外毒素C(SPEC),エルシニア偽結核菌のマイトジェン(YPM)などの発熱外毒素群が,そのスーパー抗原活性を通じて川崎病の発症に関与するのではないかと考えられている。実際に,上記の菌群による感染で川崎病様の急性期症状がみられた例が数多く報告されている。しかし,細菌性スーパー抗原を川崎病の病因として位置付けるためには,解決しなければならない問題がまだ多く残されている。要約すれば,第一に,どのくらいの割合の患者で,スーパー抗原が直接のtriggerとなっているのか?その根拠をどのように証明できるのか?第二に,スーパー抗原活性から血管炎の発症にいたるメカニズムは?適当な動物モデルを作成できるのか?などである。私達は,黄色ブドウ球菌の発熱外毒素群について4年間にわたって前方視的に調査してきたが,最近相次いで発見された新規のスーパー抗原についての情報も含めて,その結果を報告したい。