9.重症の新生児TSS様発疹症で冠動脈の一過性拡張が認められた一例
松江赤十字病院小児科 三木 瑞香
島根医科大学小児科 羽根田紀章,加藤 秀人
東京女子医科大学微生物学免疫学教室 内山 竹彦
 症例は正常満期産児。日齢2より発熱と全身の発疹と臍炎を認め、日齢4に喉頭浮腫・発赤による呼吸困難が出現し挿管管理を行った。日齢5には播種性血管内凝固症候群を合併し、交換輸血と大量γグロブリン療法を行った。Vβ2+Tcellの増加とTSST-1 IgM抗体の上昇、TSST-1 産生のMRSAが分離され、TSST-1による新生児TSS様発疹症と診断した。また、日齢4の心臓超音波検査では冠動脈周囲の輝度上昇を認め、右冠動脈は一過性に拡張した。
 本症例は、新生児TSS様発疹症の中でも特に重症例であった。川崎病の中にはTSST-1との関連を示唆する報告があるが、本症例でも冠動脈の一過性拡張が認められ、新生児TSS様発疹症でも川崎病と類似の冠動脈病変を来す可能性があると考えられるため、若干の文献的考察を加えて報告する。
10.川崎病様症状と膝関節炎を呈した
Toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)産生S.aureus菌血症の一例
旭川厚生病院小児科 梶野 真弓,坂田  宏,丸山 静男
旭川医科大学小児科 真鍋 博美
 川崎病として治療中、膝関節炎を合併し、TSST-1産生S.aureus菌血症であった症例を経験した。川崎病の病因を考える上で非常に興味深い症例であり、報告する。患者は2歳3ヶ月男児。発熱を主訴に入院、PAPM/BPにて治療を開始。第4病日、眼球結膜充血以外の川崎病症状を認め、pH4処理酸性人免疫グロブリン、アスピリンで治療を開始した。第8病日には解熱、症状も改善、軽度の心嚢液貯留を認めた以外心合併症は認めなかった。第5病日右膝関節の腫脹、疼痛を認め、関節炎と診断し保存的に治療、第8病日には治癒した。入院時の血液培養にてS.aureusが検出され、スーパー抗原遺伝子のPCRの検討でTSST-1、Staphylococcal enterotoxin (SE) C、SEG、SEIが陽性のTSST-1保持株であった。また回復期の血清で抗TSST-1 IgM抗体が陽性であった。

謝辞:分離株のPCR及びIgM抗体測定をして頂きました国立小児病院の阿部淳先生に深謝致します。
11.川崎病の頻回再発の1男児例
防衛医科大学校小児科 森西 洋一,竹下誠一郎,徳富 智明,辻本 拓,関根 勇夫
【はじめに】川崎病(以下KD)の頻回再発の報告は少ない.我々は、ほぼ同季節に発症した KD頻回再発の1男児例を経験した.
【症例】[1回目、生後9か月]平成8年7月発熱と発疹が4日間持続し,後日四肢末端の皮膚落屑にてKDが疑われた(主要症状4/6).[2回目、2歳8か月]平成10年6月発熱にて発症した(症状5/6、原田スコア2/7).[3回目、3歳8か月]平成11年6月咽頭痛,発熱にて発症した(症状6/6、スコア5/7).[4回目、4歳10か月]平成12年8月発熱,右頚部痛にて発症した(症状6/6、スコア6/7).2回目以降はIVIG(2g/kg)で治療した.4回目では関節炎症状を合併し、predonineを投与した.いずれの発症においても,心エコー上冠動脈径の拡張は認めなかった.
【考案】本症例の特徴として、(1)ほぼ同季節に発症した、(2)2回目の発症以降はいずれも右頚部リンパ節腫脹を伴っていた、(3)再発の度に重症化して4回目には関節炎症状を合併したことが挙げられる。
12.17歳発症の川崎病の一例
伊勢原協同病院小児科 山本 敬一
 症例は17歳、男児。発熱、咽頭痛を主訴に耳鼻咽喉科医院に受診。急性扁桃炎の診断で抗生剤を投与。第3病日に頚部腫瘤が増大し当院耳鼻咽喉科に紹介、入院した。眼球結膜の充血、頚部リンパ節腫脹、口唇紅潮、,体幹の不定形発疹を認め川崎病(以下MCLS)の疑いで当科に転科した。入院時、MCLS診断基準は大症状4項目のみであったが、白血球20600、CRP 24.1 と炎症所見の上昇から、MCLSが強く疑われ、γグロブリン400mg/kg/dayを5日間投与した。第7病日に解熱、第10病日から指趾末端の膜様落屑を認めMCLSと診断した。入院中、心臓超音波検査(以下UCG)で冠状動脈病変は認めず、第27病日に退院した。現在、発症から1年6ヶ月が経過したがUCGで異常は認めていない。青年期以降のMCLSでは発症時、膠原病、TSS、敗血症と診断されMCLSの治療開始が遅れることもある。青年期、成人発症の不明熱の原因としてMCLSも鑑別することが必要である。
13.川崎病の母娘例
横浜市立大学医学部小児科 黒沢るみ子,宮前多佳子,今川 智之,森 雅亮,横田 俊平
 川崎病の母子娘例を経験したので報告する。
【症例】母;27歳。 6才時川崎病と診断され、アスピリンを内服し、2週間で解熱した。冠動脈検査を行ったが、異常所見はみられなかった。娘;1歳。川崎病と診断され、アスピリン内服、大量ガンマグロブリン療法 (1g/kg/日x 2日) を行ったが症状、検査値とも改善せず、当院転院。血漿交換療法にて、軽快し冠動脈拡張は認めなかった。
【考察】川崎病は欧米に比べ日本に多く、遺伝的素因が関与していると考えられている。本例のHLA解析では、HLA-A24(9),B25(5),DR2が、母娘で一致していた。今まで二世代にわたる川崎病の報告は本例を含め4例あるが、本症と診断された第一世代が親となる時期を迎えており、今後二世代にわたる川崎病の報告例の増加が予想される。遺伝的素因を究明するためにも、詳細な家族歴の聴取と症例の蓄積が必要と思われた。