AT1 blockerによる冠動脈拡張病変のinward remodeling抑制効果
さいたま赤十字病院小児科:○大久保隆志
日本医科大学小児科:深澤隆治、上砂光裕、初鹿野見春、勝部康弘、小川俊一
【目的】拡張性病変の治癒過程に過度な内膜肥厚(inward remodeling)により狭窄性病変が惹起されることがある。AT1 blockerによるその抑制効果について検討する。
【対象・方法】対象は急性期に2D-echoにて冠動脈拡張所見が認められた16症例。対象全例にAT1 blockerを3-6ヶ月間服薬してもらい2D-echo, CAG, IVUSにて冠動脈病変の変化を検討した。対象のうち承諾の得られた12例に対し、ACE I/DおよびAT1A/C遺伝子多型の検討も併せて行った。さらに、別途、対象外の川崎病既往児8例の血中ACE,AgII濃度を経時的に測定した。
【結果】16例全例に有意な狭窄性病変の合併なく拡張病変の消退が認められた。遺伝子検索を施行し得た全例にACE D allele, AT1 C alleleの保持が見られたACE, AgII濃度はいずれも急性期に比し、回復期以降に高い値を呈した。遺伝子多型および血中ACE,AgIIの結果はAT1 blocker治療の有用性を支持した。
【結語】冠動脈拡張を伴った川崎病既往児に対するAT1blockerによる治療は、内膜の過度な肥厚を抑制し、狭窄性病変の出現を阻止しうることが示唆された。

キーワード:  冠動脈 remodeling AT1阻害薬
川崎病既往児における冠動脈微小循環障害検出の試み:
ドプラガイドワイヤーでのATP静注法と冠注法の比較
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学:
 ○問山健太郎、糸井利幸、坂田耕一、川北あゆみ、田中敏克、濱岡建城
川崎病では主要冠動脈の拡大病変や狭窄病変のみならず、冠動脈微小循環障害残存の可能性も指摘されている。その障害が高度ないし限局性のものであれば、核医学的検査その他の方法で検出できるが、心臓全体にわたるものであればかえって検出が難しく、微小循環障害の検出法は未だ確立していない。最近、成人を対象とした報告で、微小循環障害を有する心筋症などの症例では、冠血流予備能測定に際し最大反応充血を得るATPの至適量が障害のない例と異なることが示唆されている。本研究では、川崎病既往幼児例を対象にATPを用いた冠血流予備能を指標として、静注法と冠注法を比較し、その意義について検討・報告する。

キーワード:  冠血流予備能 ATP 微小循環傷害
川崎病既往例におけるFMD:評価法に関する検討
日本大学医学部小児科:○能登信孝、吉野弥生、唐沢賢祐、鮎沢 衛、岡田知雄、原田研介
血管内皮機能検査として施行されているFMD(flow-mediated vasodilatation)の小児例に対する確立した方法論はない。我々は冠危険因子のない川崎病既往15例(男性74%、年齢18.3±4.8歳、BMI 21.0±1.5 kg/m2)に前腕駆血(Sys BP+50mmHg)5分によるFMDを施行し、FMD後30、60、90、120秒後の上腕動脈内を13MHzリニアプローブ(アロカ社製SSD-6500)を使用して計測した。今回の計測の検者間誤差および検者内誤差はそれぞれ2.8%、1.7%であった。負荷前の血管径は2.9〜4.9mm(3.84±0.73mm)、負荷後のFMD(%)は30、60、90、120秒後それぞれ9.5±6.5%、13.6±6.6%、3.4±2.4%、1.2±0.3%であった。最大FMD(%)と負荷前血管径との間に有意な逆相関(r=-0.58)が得られたが、年齢、性、BMIとの有意な関係はなかった。また通常より早く負荷後30秒で最大FMD(%)に至る例が3例存在した。以上の結果からFMD(%)は血管径に依存し、測定誤差と反応の個人差が存在することから、小児の血管内皮機能評価は慎重を要すると考えられた。
川崎病類似系統的動脈炎モデルにおける動脈炎形成過程の組織学的検討
東邦大学医学部付属大橋病院病院病理学講座:○大原関利章、横内 幸、若山 恵、直江史郎、高橋 啓
東京薬科大学薬学部免疫学教室:大野尚仁
研究協力・共同研究者:山田仁美、三浦典子、鈴木和男
[背景・目的]我々は、カンジダ菌体抽出物を用いて川崎病類似マウス動脈炎誘発実験を行っている。今回は、動脈炎形成に至る組織像の推移を経時的に検討した。
[材料・方法]使用動物はC57BL/6N、4週齢、雄性。カンジダ菌体由来の可溶性多糖画分(CAWS)を起炎物質とした。CAWS、4mgをマウス腹腔内に連続5日間接種、接種終了後1,3,5,7,14,28日目に屠殺。冠状動脈を含む心基部の連続切片を作製、組織学的に検討した。
[結果]1日目から内膜炎が見られ、3〜5日では内膜炎と共に外膜側の炎症細胞浸潤が観察された。動脈壁の全層に亘る汎血管炎は、7日以降に認められた。28日では病変は拡大し、組織学的に増殖性肉芽腫性炎の像を呈していた。
[要約]初期病変として内膜炎が発生し、これに外膜からの炎症細胞浸潤が加わって汎血管炎に至ると考えられた。

キーワード:  マウス 動脈炎 川崎病
川崎病患者血清による血管内皮細胞管腔形成能の解析
千葉大学大学院医学研究院小児病態学: ○東 浩二、本田隆文、安川久美、浜田洋通、寺井 勝
【目的】川崎病では,その血管機能の評価方法としては薬物を用いた解析が一般的である.血管機能を評価するひとつの方法として,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の血管形成能を解析した.
【方法】マトリゲル上にHUVECを培養し,患者血清を添加,その後形成された血管の定量的評価をおこなった.正常対照12名,川崎病14名(冠動脈瘤6名を含む)の血清を用いた.増殖因子無添加の正常対照血清にて血管形成が可能な培養条件下で実験を行った.
【結果】正常対照に比し,川崎病では冠動脈障害の有無にかかわらず,発症1年後の血清による血管形成の低下を認めた.特に巨大冠動脈瘤では,急性期治療後早期から著明な低下を認めた.そのメカニズムについて,さらに検討している.ガンマグロブリンそのものにはHUVECの血管形成を抑制する効果はなかった.
【結論】川崎病は長期にわたり血管機能異常が存在する可能性が示唆される.

キーワード:  川崎病 ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC) 管腔形成能
冠状動脈瘤非形成川崎病剖検例の肥厚内膜平滑筋細胞について
東邦大学医学部付属大橋病院病理学講座: ○高橋 啓、大原関利章、直江史郎、横内 幸、若山 恵
肉眼的に瘤の形成がなかった川崎病剖検例の冠状動脈について、α-smooth muscle actin抗体(αSMA)、抗calponin抗体(CALP)を用い免疫組織学的検索を加えた。
【結果】汎動脈炎を伴う10病日例の内膜には線維状で微細な細胞質を有するαSMA陽性細胞が観察されたが、これらはCALP陰性であった。28病日例では軽度の炎症細胞浸潤を動脈壁全層に伴っていた。内膜にはαSMA陽性細胞が一様に分布し、同時にCALP陽性であったが共にその染色性を減じていた。9ヶ月例では内膜深層の細胞はいずれの抗体でも陽性を示したが、内腔側に分布する少数の細胞はαSMAのみに陽性であった。1年以上経過例では内膜内腔側に分布する細胞もCALPに弱陽性を示した。
【考察】カルポニンは平滑筋細胞の分化を制御するアクチン結合蛋白で収縮型平滑筋細胞に強く発現する。増殖因子の検討では発症後およそ1年を経ると対照との間に明らかな差を見出せなくなった。今回もほぼ同様の結果を得、瘤非形成動脈が狭窄性病変へと進展する可能性は低いように思われた。

キーワード:  免疫組織化学 冠状動脈 内膜肥厚