川崎病心後遺症に対する小児冠動脈バイパス手術の意義
国立循環器病センター:○北村 惣一郎
 川崎富作先生の発表から40年近くを経た現在、川崎病は広く認知され、最も頻度の高い小児冠動脈疾患となった。疫学者によると本疾患は第二次世界大戦後、日本で多発しており、病理学的にはIPNと鑑別が困難と云われているが、わが国で8000人/年、米国で10000人/年の発症があるとされる。幸い川崎病による冠動脈病変の発症はγグロブリン投与で低下しているが、重症な冠病変例での最も有効な治療法は動脈グラフト、特に内胸動脈を用いた小児冠動脈バイパス術であり、わが国で約300例(アンケート回収率53%)が行われている。心臓移植例は10例(日本では2例)程の報告がある。
 外科手術は川崎病冠動脈病変の特色が明らかになるにつれ、変遷して来た。外科治療の開始時には病因が炎症性の中型動脈炎であることから世界に経験がなく、その効果は疑問視されたが、手術後20年にわたる追跡で外科治療の有効性は疑う余地が無くなった。また、有茎動脈グラフトを用いることで小児の成長にも対応出来る。内胸動脈の内皮細胞はNOの分泌能にすぐれ、代謝面での有利性も証明され、本グラフトを用いたバイパス手術は極めて長期、おそらく終生の耐用期間があると考えている。
 また、想像の域を出ないが、心配されている川崎病変後の早期冠動脈硬化の発症に対しても内胸動脈グラフトは予防的効果を有する可能性がある。
 演者が経験し、20年に渡って追跡して来た100例の手術例について述べる。