川崎病急性期治療のガイドライン
○薗部友良(作成担当委員) 学術委員会作成担当委員長:佐地 勉 作成担当委員:赤木禎治、鮎沢 衛、上村 茂 外部評価委員:浅井利夫、加藤裕久、長嶋正實、原田研介 |
「川崎病急性期治療のガイドライン」が作成されたので、以下その要旨を示す。 急性期川崎病治療のゴールは”急性期の強い炎症反応を可能な限り早期に終息させ、結果ととして合併症である冠動脈瘤の発症頻度を最小限にすること”であると定義し、7病日以前に静注用免疫グロブリン(IVIG)の投与を開始することが望ましいとした。 治療薬としては、IVIG2g/kg単回投与が同量の分割投与より効果が高いことを明記した。しかし投与にあたっては、IVIG2g/kg単回投与のみならず、状況により1g/kg1日または2日、あるいは従来の2−400mg/kg/日を3−5日の分割投与、また軽症例ではアスピリン治療のみでも治療が可能であることを認めている。 そのほかIVIG不応例の治療選択、抗血栓療法心血管系合併症に対する治療の要約、全身管理および支持療法に関して述べてあるが、基本的には現状追認のガイドラインになっている。 |
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慢性期の経過観察のガイドライン
西神戸医療センター ○馬場國藏 |
2002年の本研究会で作成した川崎病の管理基準(日本川崎病研究会運営委員会編2002年改訂)について述べる。前回の基準作成から17年経過しその間に多くの知見が積み重ねられた。とくに、急性期(発症1ヵ月以内)に冠動脈病変を来たさなかった既往児や、急性期に一過性冠動脈拡大のみの既往児には遠隔期に新たな病変をきたすEBMが今のところない。つまり、これまでに遠隔期に新たな病変をきたしたとする報告に当たったがその事実はなかった。その上に立ってこの2群についてはある年限(一応5年としたが)がたてば経過観察も必要なかろうとした。また、これら2群に加え、冠動脈瘤が自然消褪したもの、発症急性期に冠動脈の小瘤や拡大があったものも遠隔期には運動制限の必要がないとした。発症急性期に冠動脈に中等瘤以上の病変を来たした既往児の遠隔期の管理は小児循環器病を専門とする小児科医の判断にゆだねることとした。 |
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後遺症の診療ガイドライン:血液検査
日本医科大学小児科: ○小川俊一 |
川崎病後遺症のガイドライン「血液検査」の項目の概説をする。 【心筋梗塞の血液検査】心筋細胞傷害を診断するための血液生化学的マーカーは細胞質可溶性分画に存在する心筋細胞質マーカーであるCK(Creatine Kinase), CK-MB,ミオグロビン,心臓型脂肪酸結合蛋白(heart-type fatty acid-binding protein: H-FABP)、および心筋構造蛋白マーカーである、筋原線維を構成するミオシン軽鎖、トロポニンT, I(TnT, TnI)などである。極早期の心筋梗塞の診断にはミオグロビン、H-FABPが有用であり、発症より6時間以上経過していればCK-MBおよびTnTが診断上有用である。心筋梗塞診断の生化学検査の第一マーカーはCK-MBとTnTである。 【動脈硬化の血液検査】動脈硬化の診断には、高脂血症の診断が重要である。高脂血症の診断では一般的に総コレステロール(TC) 、HDLコレステロール、トリグリセリド(TG)の3つ用いられる。また、動脈硬化の独立した危険因子としてホモシステインが注目されている。小児期および成人期の高脂血症の各マーカーの基準値を元に的確な診断が必要である。 |
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後遺症の診断と治療に関するガイドライン:生理検査
日本大学医学部小児科: ○鮎沢 衛 |
川崎病の診療において、心電図、心エコー法などの生理検査が、急性期の心合併症、遠隔期の心後遺症の診療において重要な位置づけを持つことは以前から変わっていない。成長期の小児において、心筋障害や心筋虚血をいかに評価できるかという問題を中心に研究が進められている。心電図および特殊心電図の川崎病における所見について、これまで集積された知見をまとめる。 現在までに、安静時12誘導心電図以外の生理検査として、運動負荷心電図、ホルター心電図、加算平均心電図、体表面電位図、薬剤負荷心電図、心磁図などが研究され、安静時12誘導心電図だけでは表現されない潜在性の心筋虚血を、より非侵襲的かつ高精度に評価するための検査法が求められているが、現在では心エコー、心筋シンチグラムの発達により、心電図や対表面電位図はそれらの所見に対する傍証としての役割が大きいと考えられている。 |
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後遺症の診療ガイドライン:画像診断
日本大学小児科:○唐澤賢祐、原田研介 |
川崎病心臓血管後遺症の画像診断は心臓カテーテル検査がGold standardであり、侵襲の少ない診断法として心エコー図法、心筋シンチグラフィが行われる。日本循環器学会のガイドラインでは、冠動脈冠動脈病変の重症度によって適切な画像診断法を選択するとともに標準的な診断法の実施法を示した。冠動脈瘤の形態診断は心エコー図法が主体であり、心筋虚血および心筋梗塞に関する評価は心筋シンチグラフィおよび心エコ−図法による診断が低侵襲性、客観性および重症度評価の面で有用である。心筋虚血の診断は、小児では薬物負荷、運動が可能な例では運動負荷を行った画像診断法が重要である。心筋梗塞および心筋viabilityの評価は、安静時心筋シンチグラフィの取り込み、負荷タリウム心筋シンチグラフィの再分布像などが有用である。実際の臨床では、簡便性、コストの面で負荷心エコー図法を行い、客観性、重症度評価で負荷心筋シンチグラフィを行うことが適切な利用法である。他の画像診断法として、MRI、超高速CTおよびMulti-slice spiral CTは冠動脈病変および心筋障害の詳細な評価が低侵襲的に行うことができる。PETはviabilityに関する精度の高い評価が可能である。 |
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後遺症の診療ガイドライン:心臓カテーテル検査
東京逓信病院小児科: ○鈴木淳子 |
川崎病における「心臓カテーテル検査(心カテ)」は、「選択的冠動脈造影」とほとんど同義語として使われていたが、急性期直後の動脈瘤の形態確認、その後の狭窄性病変への進展の経過観察を目的とした心カテの施行例数は近年減少してきている。 一方、最近、低侵襲的CTや非侵襲的MRIによる冠動脈画像診断法が発達し、心カテに代用されつつある。最近の心カテは、冠動脈血管形成術や冠動脈バイパス術、血栓溶解療法等の治療に直接結びつく場合が多い。さらに心カテでは心機能の評価や血管内超音波法による血管内膜肥厚の観察、冠動脈拡張能測定が行なわれたり、圧力センサー付きガイドワイヤーによる冠内圧測定やドップラーガイドワイヤーによる冠血流量測定などの冠動脈狭窄の機能的重症度評価の検査などを伴ったりしている。現在、心カテは冠動脈造影のみならず将来の冠動脈の予後を推定可能とする検査としての意義も持ってきている。 |
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後遺症の診療ガイドライン:薬物治療
東邦大学第一小児科: ○佐地 勉 |
冠動脈障害合併例では内膜肥厚による狭窄性病変と血栓性閉塞による虚血性心疾患(IHD)、AMIが死亡の主因である。IHD治療の基本は、冠血流の増加、冠攣縮(スパズム)の予防と軽減、血栓形成の抑制、心仕事量の減少、血管壁remodelingの抑制である。主な治療薬は、抗血小板薬、Ca拮抗薬、硝酸薬、β遮断薬、ACE阻害薬ACE-1、AT受容体拮抗薬ARBである。 「AP、AMIの発症予防」労作時APにはβ遮断薬で心筋酸素需要を抑制することが有効で、不十分ならCa拮抗薬を併用する。安静時/夜間のAP症例にはCa拮抗薬やニトログリセリン等の冠血管拡張薬が有効で、いずれも抗血小板薬との併用でAMIの二次発症や心事故の頻度を減少させる。KDに合併するAMIのうち、63%が睡眠中または安静時であり、必ずしも運動や労作時ではない。以上より冠動脈攣縮の関与を充分に考慮すべきである。 |
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川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン:非薬物療法
日本循環器学会「川崎病心臓血管後遺症の診断と治療に関するガイドライン」作成班 (班長:原田研介)赤木禎治,唐澤賢祐,北村惣一郎,佐地 勉, 鈴木淳子,馬場 清,藤原久義,加藤裕久,原田研介 |
川崎病心血管後遺症の非薬物治療には,冠動脈カテーテルインターベンション(PCI)と冠動脈バイパス手術があげられる.粥状動脈硬化を主体とする成人の冠動脈病変とは異なり,川崎病の冠動脈病変には高度の石灰化を伴う事が多いため,成人領域で用いられている適応や方法をそのまま川崎病の病変にもちいるには注意を要する.PCIとしては経皮的冠動脈形成術(PTCA)とロータブレーターが主体をなしてきている.川崎病に対する冠動脈インターベンションはいまだ経験が限られており,長期的な予後には不明な点が多く,今後エビデンスの蓄積が必要である.冠動脈バイパス手術としては,有茎内胸動脈を用いた冠動脈バイパス手術が確実な治療法であり,わが国のみならず,欧米でも普及している.川崎病罹患児の急性期後の死亡の原因のほとんどが突然死と心筋梗塞であるため,時期を逸しないカテーテル治療やバイパス手術適応の決定が重要である. |
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