‘超巨大’冠動脈瘤の破裂により死亡した一例 -臨床経過-
日本大学医学部小児科
  今井由生 鮎沢 衛 宮下理夫 阿部 修 唐澤賢祐 住友直方 岡田知雄 原田研介
日本大学医学部病理学 砂川恵伸 三俣昌子 根本則道
 今回、早期より巨大冠動脈瘤を形成し、13病日に冠動脈瘤破裂による心タンポナーデにより死亡した一症例を経験した。症例は5歳男児、主訴は右頸部腫瘤と発熱、第5病日に川崎病と診断され、第7病日の心エコー検査で左右の冠動脈に巨大瘤を認めた。ガンマグロブリン1g/kg/dayを3日間使用しASA、ウリナスタチン、降圧剤の併用により加療したが反応なく瘤は増大し続け、第13病日、左冠動脈瘤破裂、心タンポナーデにより死亡した。今回の症例では第7病日にすでに巨大冠動脈瘤の形成を認めており、ガンマグロブリン投与により、瘤の増大を抑制することはできなかった。早期から急速に直径10mmを越える瘤を形成する例に対しては、瘤の増大のスピード、治療への反応性も含め「超巨大瘤」として10mm以下の冠動脈瘤と区別し、破裂の危険性を充分考慮する必要があると考えられる。
巨大冠動脈瘤の破裂による川崎病死亡例-病理学的所見について-
日本大学医学部病理学教室 砂川恵伸 根本則道 三俣昌子
【目的】5歳、男児冠動脈瘤破裂症例を経験し、瘤形成および破裂の原因を明らかにするために病理学的検討を行った。
【方法】ヘマトキシリン(HE)染色、特殊染色および免疫組織化学染色を施行した。
【結果】肉眼的には左右冠動脈ともに瘤の形成を認めた。左前下行枝は起始部から0.8cmの部位より全長4cm、最大径1.8cmの瘤を形成し、瘤部に2mmの亀裂を認め心タンポナーゼを合併していた。右冠動脈は起始部から0.8cmの部位より8cm長、最大径1cmの瘤の形成をみた。左回旋枝の拡張は軽度であった。組織学的には冠動脈の全層性炎症細胞浸潤、fibrinoid necrosis類似所見、弾性線維の部分的消失、器質化血栓、心筋炎が認められた。血管壁の炎症細胞浸潤は多彩であり、myeloperoxidase陽性細胞浸潤が多く認められた。
【考察】本症例の血管壁の破綻にはmyeloperoxidase陽性細胞浸潤が強く関与した可能性がある。