川崎病発症に対するIL-17Fの影響
東邦大学医学部 二瓶浩一 道海秀則 中里純子 青木継稔 四宮範明
【目的】種々の炎症誘導サイトカイン産生に関与することが知られているIL-17ファミリーのIL-17およびIL-17Fを測定し、川崎病における関与を検討すること。
【方法】川崎病患児16名と同年齢健常児6名を対象とした。末梢血単核球におけるIL-17およびIL-17FmRNAの発現をRT-PCRにより検討した。さらに血清中IL-17濃度をELISAキットにて測定した。
【結果】IL-17mRNAの発現は川崎病急性期患児2名にみられたが、回復期は認めなかった。同時期血清のIL-17値も2例を除いて陰性であった。一方IL-17Fは、川崎病急性期にIL-17FmRNAの強発現がみられ、回復期は減弱あるいは陰性であった。
【考察】IL-17ファミリーは炎症誘導サイトカイン産生に関与するが、各メンバーはレセプター存在組織の相違により機能組織が異なる。血管内皮細胞に作用することが報告されているIL-17ファミリーの1つであるIL-17Fが、川崎病の病態に重要であると考えられた。
川崎病冠動脈瘤における細胞接着分子の免疫組織学的検討
横浜労災病院小児科 三浦 大
【目的】白血球浸潤,血管新生,組織リモデリングを調節する細胞接着分子が,川崎病(KD)の冠動脈瘤(CAA)形成に関与するかどうかを検討した。
【方法]急性期KD6例と対照7例の冠動脈(CA)を対象に,免疫組織染色を用い,P-selectin,E-selectin,VCAM-1,Integrin β1の発現を観察した。
【結果】1)血管内皮上のE-selectinとVCAM-1:KD のCAA漿膜の微小血管(MV)で各々3例に発現した。いずれかが陽性の割合は,対照CAより高率であった(4/6 vs. 0/7,P= 0.02)。KDの正常CAでは,いずれも陰性であった。
2)血管内皮上のP-selectinとIntegrin β1: KD CAAのMV,KDの正常CA,対照CAで,いずれも全例陽性であった。
3)KDのCAAのみに,Integrin β1陽性の白血球(5例)と線維芽細胞(6例)が検出された。
【考察】MV内皮のE-selectinとVCAM-1は血管新生と炎症の持続を,線維芽細胞のIntegrin β1は組織リモデリングを促進し,KDのCAA形成に関与すると考えられた。(共同研究者:Northwestern大学医学部小児科Anne H. Rowley)
急性期川崎病冠動脈瘤患者にみられるインビトロ血管内皮細胞管腔形成不全のメカニズム
千葉大学大学院医学研究院小児病態学
  東 浩二 江畑亮太 遠山貴子 本田隆文 安川久美 寺井 勝
【目的】高安病とは異なり、川崎病冠動脈瘤例では患者血清によるヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の管腔形成不全がみられる。またガンマグロブリンやアスピリンによる影響は少ないことを既に報告した。これら患者血清には、フリーの血管内皮細胞増殖因子(VEGF)濃度が健常対照に比べ高いため、このVEGFを介したインビトロ血管新生を抑制している機構の存在が推測される。そこで、VEGF機能を制御している細胞内シグナル伝達分子p38 MAPKについて解析した。
【方法・結果】マトリゲル上にHUVECを3次元培養し,患者血清を添加,形成された血管長を定量評価した。冠動脈瘤群血清によるHUVEC管腔形成不全のレスキューに、VEGF添加は効果が弱いことが判明した。次に、p38 MAPKの阻害剤(SB203580)を添加したところ、HUVEC管腔形成能が健常対照群と同等まで回復した。
【結論】冠動脈瘤血清によるHUVEC管腔形成不全の機序にはp38 MAPKの関与が考えられ、治療戦略の視点から更に検討が必要である。
川崎病後遠隔期における炎症性マーカーの検討:冠動脈障害と高感度CRP値、Serum Amyloid-A値の関連
三重大学医学部小児科 三谷義英 澤田博文 駒田美弘
山田赤十字病院小児科 早川豪俊
天理よろづ相談所病院 松村正彦
兵庫県立こども病院循環器科 黒江兼司
松阪市民病院小児科 青木謙三
【目的】遠隔期川崎病既往者で各種炎症性マーカーを測定しその関連因子を検討した。
【方法】対象は、非川崎病例(Ref群, n=15)、川崎病既往児の正常冠動脈例(N群, n=27)、瘤退縮例(R群, n=18)、冠動脈病変例(CAL群, n=20)。川崎病群の川崎病後経過年数は、平均10年10ヶ月。CRP、SAA、Interleukin-6 (IL-6)、可溶性接着因子 (sICAM1)を測定した。
【結果】CRP値は、CAL群のみRef群に比べ高値(p<0.05)で、SAA値陽性例は、CAL群のみに多い(p=0.001)。CRPは、SAA、IL-6と相関を認めた。CRP値、SAA値の独立した決定因子は、CAL群(p=0.001、0.005)であった。
【考察】川崎病後遠隔期において、CRP値、SAA値の独立した決定因子はCAL群であり、炎症が遠隔期川崎病の血管病変の新たな機能的側面である事を示唆する。