VEGF遺伝子多型と川崎病との関連
 
千葉大学大学院医学研究院 江畑亮太
千葉大学大学院医学研究院小児病態学 東 浩二 本田隆文 安川久美 地引利昭 寺井 勝
国立成育医療センター研究所免疫アレルギー研究部 阿部 淳
【目的】VEGF産生に関わる遺伝的背景と川崎病の病因および冠動脈病変の発症の関連を明らかにする。
【方法】VEGF産生に関与するVEGF g-2578 C>A、VEGF g-634 G>Cの2つの一塩基多型をTaqManケミストリによる定量的PCRを用いて解析した。対象は川崎病既往患者の正常冠動脈例(no CAL群、n=83),冠動脈病変合併例(CAL群、n=57)、川崎病の既往のない成人ボランティア(Control群、n=81)。
【結果】1. VEGF g-2578 C>Aに関してはallele頻度、genotype頻度ともに3群間で有意差を認めなかった。 2. VEGF g-634 G>Cに関してはallele頻度、genotype頻度ともに3群間で有意差を認めなかった。 3.ハプロタイプ解析ではno CAL群(CG:22%,CC:44%,AG34%)、CAL群(CG:28%,CC:45%,AG27%)、Control群(CG:33%,CC:40%,AG27%)であった。CGパプロタイプの頻度が、Control群に比しno CAL群で有意に低かった(p=0.026)
【考察】各々の遺伝子多型と川崎病の発症や冠動脈瘤形成には関連を認めなかった。しかし、パプロタイプ解析でのCGパプロタイプの頻度がno CAL群でControl群に比し有意に低いという結果はVEGF産生に関わる遺伝的背景と冠動脈瘤形成の関連を示唆している可能性がある。
ヘパリン全血を用いた川崎病患者の遺伝子発現解析
国立成育医療センター研究所 阿部 淳 中島敏治 斎藤博久
国立成育医療センター第1専門診療部アレルギー科 野村伊知朗
千葉市立海浜病院 地引利昭
千葉大小児病態学 寺井 勝
【目的】川崎病患者の好中球で特異的に発現制御される遺伝子を同定するために、ヘパリン全血と単核球における発現プロファイルを比較した。
【方法】急性期患者(4例)のヘパリン全血からmRNAを抽出し、GeneChip=を用いてIVIG療法前後での遺伝子発現量を測定した。リアルタイムRT-PCR、FACSにより結果を確認した。
【結果】54,675個の遺伝子プローブの中で、841個の発現量がIVIG療法後に2分の1以下に減少した(P=0.05)。このうち374個のプローブは、これまでに単核球分画、モノサイト分画では減少が認められなかった新しい遺伝子であった。これら374個中87個のプローブの発現量はIVIG療法前の患者で発熱対照群と比べて2倍以上に亢進していた。
【考察】IVIG療法は、モノサイトのみならず好中球の多様な機能遺伝子発現を制御することにより急性期の炎症を抑制していることが推測された。
川崎病におけるICAM-1、MCP-1、CCR2遺伝子多型
日本医科大学多摩永山病院小児科 深澤隆治
日本赤十字医療センター小児科 薗部友良
福岡大学小児科 濱本邦洋
京都府立医科大学小児疾患研究施設内科 坂田耕一 濱岡建城
日本医科大学小児科 池上 英 渡邉美紀 小川俊一
日本医科大学第二病院小児科 初鹿野見春 上砂光裕 勝部康弘
【背景・目的】我々の急性期川崎病遺伝子発現の検討では、CD11b、ICAM-1およびMCP-1の発現亢進が顕著であった。今回ICAM-1、MCP-1およびその受容体CCR2の遺伝子多型と川崎病の病態との関係を検討した。
【方法】川崎病既往児241例(4.4±5.4歳)および正常者125例(27.0±6.0歳)にてICAM-1 K469E、MCP-1 A –2518G、CCR2 V64Iの遺伝子多型を解析した。それぞれの多型で川崎病例と正常者、川崎病例の有熱期間、免疫グロブリン療法(IVIG)の解熱効果、最大白血球数、最大CRP、冠動脈障害の有無を比較検討した。
【結果】MCP-1 A–2518G多型でG/G例の有熱期間が9.5±5.6 vs 8.0±3.4日(p=0.05)と長かった。遺伝子多型の組み合わせでは、CCR2 V alleleとMCP-1 G/G alleleを持つ例(n=57)はIVIGが無効で(19.2 vs 6.3%, p=0.055)、発熱期間が長く(9.9±6.0 vs 8.0±3.4日, p=0.02)、WBCも高かった(17436±7477 vs 15262±4887, p=0.04)。また、MCP-1 G/G alleleとICAM-1 KK alleleを有する例(n=11)はIVIGが無効で(40.0 vs 6.0%, p=0.005)、発熱期間も長かった(11.7±7.7 vs 8.1±3.6日, p=0.005)。
【結語】ICAM-1、MCP-1、CCR2 遺伝子多型は川崎病発熱期間やIVIG解熱効果に関係していた。
発現クローニング法(SEREX)を用いた川崎病末梢血単核球cDNAライブラリーの解析
山口大学医学部生殖・発達・感染医科学講座/小児科 金子美保 上野佳子 竹川剛史 市山高志 松原知代 古川 漸
岡山大学大学院医歯学総合研究科・医学部免疫学 中山睿一
岡山大学自然生命科学研究支援センター 小野俊朗
cDNA発現クローニング法(SEREX)で川崎病(KD)の末梢血単核球の抗原ペプチドの分離解析を試みた。
【方法】山口大学附属病院および協力施設に入院したKD92例(4ヵ月から6才)の急性期治療前の末梢血単核球を用いてcDNAライブラリーを作製した。6才男児のKD典型例(免疫グロブリン療法未施行)の回復期(第32病日)の血清をスクリーニングに使用しSEREXにて抗原ペプチドを同定した。
【結果および考察】20,000クローンを解析し、陽性クローン5個が単離された。シークエンス解析によってすべてimmunoglobulin heavy constant gamma 1 (IGHG1)と同定された。これらはファージプラーク解析により非特異的なものでないことを確認した。KD末梢血に抗原としてIGHG1が存在し、IGHG1に対する免疫応答が推測された。その意義についてはさらに検討を要するが、IgGのγ鎖の遺伝形質であるGmアロタイプが、疾患感受性や免疫グロブリン応答性などに関与している可能性が考えられる。現在、KD児のGmアロタイプについて血球凝集法により測定中で合わせて報告する。