川崎病のtriggerは、花粉であろう(第4報) 2006年東京都定点報告川崎病発症数は
過去7年間で最大であった。
−2005年過去最大の花粉飛散数が観測された翌年への乳幼児花粉感作→
川崎病発症のcarry-over現象と捉えられるか−

(独)科学技術振興機構、(独)理研横浜研究所、皮膚科学疫学研究所 粟屋 昭
皮膚科学疫学研究所 森 透
東邦大学薬学部 佐橋紀男
2002年以来、著者は「花粉惹起(誘導)疾患(Pollen-Induced Diseases、PID)であるアレルギー性鼻炎・結膜炎(花粉症)や川崎病、喘息、アトピー性皮膚炎等アレルギー疾患患者、更にはパーキンソン病患者や難聴者の皮膚状態はおとなしく、ほくろの殆どない人・ほくろ生成系の弱い人が大多数である」という知見を報告し、メラノサイトの活性化方策を提案してきた。2000〜2002年の花粉大量飛散、1995年の当時過去最大花粉飛散、そして1982年の当時過去最大花粉飛散、これら自然現象に連動して、川崎病や花粉症等の発症患者数の増加は顕著であるが、その翌年以降もたとえ花粉飛散数が大分少なくても、患者数が大きく減少することはなく、右肩上がりに増加する現象が特に川崎病では明確に見られ、患者個々人の花粉感作と発症のtime-lagがこのcarry-overの原因であろうことを著者は報告してきた。また、川崎病は91年〜02年の5900人以上の神奈川県患者数の月別発症数のグラフ化により、年間3回の波(wave)を形成する発症peak(高原状態)がほぼ存在する、発症patternを示すことが指摘され、国立相模原病院観測花粉飛散数の年間推移とのグラフ比較解析dataは、花粉飛散との関連を強く示唆する状況証拠知見となっている。
【解析・結果・考察】これまでの月別比較を週別比較するためdataの再整理・グラフ化を行った。95年の後年の花粉飛散の少ない96年の、花粉症発症患者数は、減少することなく、増加することが千葉県で明らかにされており、川崎病の知見と揆を一にしている。また、晩秋から初冬の僅かなさきがけ花粉飛散に触発・感作され感受性の高い花粉症患者は、1月、2月の本格シーズン花粉症にかかる以前に、花粉症症状を呈することが耳鼻科領域でも最近明らかにされており、花粉飛散に感受性の高い乳幼児が、12月、1月に川崎病を最大に発症する事実とよく符合する。花粉症患者の動態との経年的疫学的な相互比較の積み重ねが、花粉trigger→川崎病発症事象を明確に示すものと考える。
モンゴルにおける川崎病:全国調査結果
自治医科大学公衆衛生学教室 ダヴァールハム・ダンバダルジャー 中村好一 上原里程 大木いずみ
埼玉県立大学 柳川洋
日本川崎病研究センター 川崎富作
【目的】川崎病は世界中の60以上の国・地域から報告されているが、これまでモンゴルからの報告はない。そこでモンゴルに川崎病患者が存在するかどうかの調査を実施した。
【方法】後ろ向きの全国調査を2005年9月から2006年3月にかけてモンゴルで実施した。モンゴルにおける小児科医の間での川崎病の認識は充分ではないので、調査に先駆けてすべての州立病院、ウランバートルの小児科と感染症を対象とする大規模病院、地区の保健センターの小児科部長を集めて教育的なセミナーを実施した。その後にセミナー参加者の所属機関の協力の下に、1999年9月から2005年までの16歳までの診療録が検索され、川崎病の診断基準に該当する患者の存在が確認された。第5回改訂川崎病診断の手引をモンゴル語に翻訳し、カラー写真と共にすべての病院に配布した。日本の全国調査と同様の調査票を配布し、川崎病患者の情報収集を行った。
【結果】
32の病院をセミナーに招待し、そのうちの30の病院(94%)が参加した。このうち29病院(97%)が調査に協力した。調査期間の入院患者159,257人が検討され、合計4人(首都のウランバートルの病院から2人とその他の州の病院から2人)の川崎病患者が報告された。患者の年齢は9歳から12歳(平均±標準偏差:10±1.4歳)で、3人が男児であった。すべての患者で7日から40日間の発熱、皮膚の発疹、頸部リンパ節腫脹があった。眼球結膜の充血と四肢末端の変化はそれぞれ1人と2人の患者で観察された。1人で冠動脈の拡大が観察されたが、他の3人では心障害はなかった。
【結論】今回のモンゴルにおける全国調査で、同国にも川崎病患者が存在することが判明した。モンゴルにおける川崎病の状況を把握するために、今後とも継続的に調査を実施する必要がある。また、川崎病の診断や治療に関する小児科医の研修も必要である。
川崎病疫学像の最近の推移
−第11回〜第18回全国調査成績より−

自治医科大学公衆衛生学教室 屋代真弓 上原里程 大木いずみ 中村好一
埼玉県立大学 柳川洋
日本川崎病研究センター 川崎富作
【目的】最近の川崎病の疫学特性を明らかにする。
【方法】川崎病全国調査資料を用いて、1989-2004年の16年間について、患者数、罹患率、死亡、再発、同胞発生の割合などの疫学特性を明らかにした。心障害(急性期・後遺症)については、1997年−2004年の8年間の解析を行った。
【結果】16年間の川崎病患者は110,877人(男:64,243人、女:46,634人)であり、これらを4年ごとに分けて観察した結果、観察当初と比べて、罹患率は0-4歳人口10万対年間87.0から154.0へ1.8倍の増加がみられた。年齢別にみると0歳は1.4倍、1-2歳は1.8倍、3-4歳は2.0倍、5歳以上は2.2倍増加しており、高年齢ほど増加傾向が強かった。患者数は常に男が多く、性比(男/女)はやや減少した。再発は3.6%に、同胞ありは1.2%とやや増加した。致命率は0.03%と1/4以下まで低下した。初診月は第4四半期の10-12月が少なく、地域分布では異なった時期に局地的な増加がみられた。心障害(急性期・後遺症)は減少傾向を示し、年齢別の出現割合をみると若年齢と高年齢で高いが、年次と共にすべての年齢で低下した。心障害の種類別出現率は1997-2000年に比べて、2001-2004年はほとんどの病変で減少がみられた。心障害出現率は、ガンマグロブリンの治療(特に短期大量療法)の確立と普及に並行して減少した。
【考察とまとめ】川崎病は1986年以降は過去に見られたような全国規模の流行は認められなかったが、患者数および罹患率は着実に増加し続けており、患者発生に地域集積と移動の特徴がみられた。今後とも継続的に発生動向を把握する必要がある。川崎病疫学研究グループは、2007年1月に2005-2006年の2年間の初診患者を対象に第19回全国調査を予定し準備を進めている。対象施設はおよそ2,220施設、今回の追加項目はBCG接種部位の発赤・痂皮形成等の有無、ガンマグロブリン追加治療・ステロイド投与の内容等である。今後とも関係各位のご協力をお願いしたい。
川崎病における近年のガンマグロブリン療法の現状
自治医科大学公衆衛生学教室 大木いずみ 屋代真弓 上原里程 中村好一
埼玉県立大学 萱場一則 柳川洋
【目的】2003年にガンマグロブリン超大量療法の保険診療が認められ、投与方法が変化したことから、最近の川崎病急性期に用いられるガンマグロブリン療法の現状を第17回及び第18回川崎病全国調査の資料を用いて明らかにすることを目的とした。さらに、入院期間との関連も経時的に観察した。
【方法】2001年から2004年の患者を対象とした 第17回及び第18回全国調査結果を集計した。良く用いられるガンマグロブリン投与方式の経時変化を分析するために月毎の推移を観察した。さらに、入院期間の観察を経年的に行った。
【結果】4年間の報告患者36,090人のうち、ガンマグロブリン投与ありとした30,988人について解析した。ガンマグロブリン治療を受けた者の割合は86%で、4年間ほとんど変わらないが、投与方法は変化した。良く用いられる投与方式別の観察では2003年7月の保険診療認可前では2000mg/kg×1日投与が占める割合は15から30%であったのに対し、認可後には50から60%にまで増加した。また反対に、約20%を占めていた400mg/kg×5日投与が2から3%にまで減少した。一方で、全体での平均の入院期間は2001年が16.1日間、2002年が15.4日間、2003年が15.1日間、2004年が14.2日間と少しずつ短くなることが観察された。ガンマグロブリン投与ありのうち、追加投与ありとした者は約15%であった。
【考察】ガンマグロブリン投与方式に保険診療の認可が及ぼす大きさを示した。また、入院期間の短縮に治療方法が影響していることが考えられた。適切な治療によって全体としての予後の改善が観察されている一方で、ガンマグロブリン不応例に対する治療法の検討が今後さらに必要であると考えられる