微熱で冠動脈病変が出現・進行した川崎病の5例
| 名古屋第一赤十字病院小児医療センター循環器科 永田佳絵 河井悟 生駒雅信 羽田野為夫 |
川崎病の治療開始後に、一旦解熱したにもかかわらず再び微熱となり、冠動脈病変が出現・進行した5例を経験したので報告する。
【症例1】10ヶ月男児。第5病日よりアスピリンを開始し翌日に解熱した。冠動脈病変は認めなかった。第8病日より37℃台半ばが続き、第12病日には39.0℃となり、左冠動脈(Seg5,6)が軽度拡大したためγグロブリンを使用した。
【症例2】3歳女児。第7病日よりアスピリン、γグロブリンを使用し解熱した。第10病日に冠動脈病変は認めなかった。第11〜13病日には夜1〜2時間のみ37.5、38.5、37.7℃となったが、それ以外は36℃台であった。第14病日になりSeg6が4mmなど両側冠動脈の拡大を認め、γグロブリンを追加した。
【症例3】7ヶ月男児。第3病日よりアスピリンを開始し、第5病日にγグロブリンを使用し解熱した。当初、冠動脈病変はなかったが第10病日にSeg6が軽度拡大していた。第11、12病日に37℃台半ばとなり、Seg5の拡大も出現したためγグロブリンを追加した。
【症例4】3歳男児。入院直後の37.2℃が最高体温で第7病日にアスピリン開始後は、36℃台で推移した。第17病日にはSeg5:3.08mmが3.67mmに、Seg1:3.03mmと拡大が進行した。
【症例5】10ヶ月女児。第4病日よりアスピリンを開始し、第7病日にγグロブリンを使用し解熱した。第9〜17病日は37℃台が続いた。第7病日には冠動脈病変はなかったが、第17病日より軽度拡大が出現し第22病日にはさらに進行した。
今回の5例のうち、微熱に対しγグロブリンを使用した3例はすぐに解熱し、その後に冠動脈病変は進行しなかった。一方、使用せず経過を見た2例は解熱後も冠動脈病変が進行した。微熱が続く症例に、早期にγグロブリン投与をすることで冠動脈病変発生が抑制できるかどうか今後検討が必要である。 |
|
|
年長児に発症した川崎病の臨床的検討
和歌山県立医科大学小児科 末永智浩 鈴木啓之 渋田昌一 武内崇 吉川徳茂
社会保険紀南病院小児科 南孝臣 |
以前より年長児に発症した川崎病では心血管障害が多くみられるとの報告が散見され、最近では第16回全国調査成績を用いた解析でも6歳以上の年長例は心血管障害の独立した危険因子であるとの報告がなされている。当院で経験した川崎病学童期発症例について臨床的検討を試みた。
【対象と方法】平成11年5月から平成17年12月までに当院で経験した川崎病は135例で、6歳以上の発症例は11例であった。これら11例を年長群、好発年齢とされる1歳以上3歳未満の発症例70例を対照群とし、入院病日・ガンマグロブリン(以下IVIG)開始病日・経過中の白血球およびCRPの最高値・血清Naおよびアルブミンの最低値・IVIG追加の有無・冠動脈病変の有無などの臨床的データについて後方視的に検討した。統計手法はMann-WhitneyのU検定・Fisherの直接確率計算法を用いた。
【結果】年長群・対照群ともにIVIGは1g/kg/day×2回投与で開始。白血球は中央値が年長群の19800/μlに対し対象群が14500/μl、CRPは年長群が13.51mg/dlに対し対照群は7.55mg/dlで、p値はそれぞれ0.0147および0.0029と明らかな有意差を認めた。有熱期間は中央値で年長群が8日に対し対照群は6日で年長群が有意に長く(p=0.0034)、アルブミンは年長例が有意に低くなっていた(p=0.0139)。IVIG追加は対照群が70例中7例であったのに対し、年長群は11例中5例でなされており、p値は0.0087と年長群で有意に追加投与がなされる頻度が高かった。冠動脈病変については年長群11例中2例、対照群70例中3例でp値は0.1340であった。入院病日やIVIG開始病日に有意差はみられなかった。
【まとめ】年長例は発熱が長く続き、急性期の炎症反応も高度に上昇していた。関節炎や心筋炎の合併例も複数みられた。冠動脈病変の発生に差は認めなかったものの、IVIG不応で治療に難渋する症例が多かった。 |
|
|
顔面神経麻痺および冠動脈瘤を併発した
成人発症川崎病の一例
昭和大学横浜市北部病院総合内科 土屋静馬 三代川章雄 田口進
昭和大学横浜市北部病院こどもセンター 曽我恭司
昭和大学横浜市北部病院循環器センター 小原千明 上村茂 |
【はじめに】成人発症の川崎病はきわめて稀であり本邦においてもその報告例はわずかである。このため、成人発症の川崎病ではしばしば診断に難渋し治療開始が遅れる可能性がある。
今回、我々は当院で顔面神経麻痺および冠動脈瘤を併発した成人発症川崎病を経験したので報告する。
【症例】33歳男性。39度台の発熱と関節痛を主訴に近医受診、NSAIDs内服にて経過観察となっていたが、第7病日に発熱の持続と眼球結膜の充血および四肢の浮腫・腫脹を認め近医を再受診した。クラリスロマイシン追加にても症状改善を認めないため第15病日に当院を紹介受診となった。
初診時、39度台の発熱、眼球結膜の充血、15mm大の両側頚部リンパ節腫脹を認め、CRP9.76など炎症所見の上昇を認めた。発疹、口腔粘膜の発赤は認めなかった。2日後に再診となり、上記症状に加え左顔面神経麻痺および手指の膜様落屑を認め同日入院となった。翌日の心エコーでは冠動脈の瘤形成を認め、内科精査にて他疾患は否定され、川崎病診断基準6項目中4項目に冠動脈瘤を合併し川崎病と診断した。第20病日よりアスピリン(50mg/kg
daily)内服を開始、解熱傾向を示していたが発熱、眼球結膜の充血は持続し、第24病日にガンマグロブリン大量投与(2000mg/kg)を行った。投与後は直ちに解熱し両側頚部リンパ節腫脹は消退したが、眼球結膜充血、顔面神経麻痺は発熱後8週目まで残存した。CAGは第122病日に施行した。右冠動脈は1番から3番にかけて長い瘤形成を認め、左冠動脈は6番に長い瘤、左前下行枝にも瘤形成を呈した。
【考案・結語】今回の症例においては左右冠動脈瘤、関節痛を認め、さらに顔面神経麻痺を呈した初めての成人発症川崎病と考えられる。今後、成人発症症例のさらなる蓄積と検討、内科領域での診断の普及が望まれる。 |
|
|
川崎病に4回罹患した1男児例
前橋赤十字病院 清水真理子 後藤智紀 柴梓 萩原里実 松井敦
群馬大学医学部附属病院 井上佳也 |
【目的】川崎病は約3%が、再発することが知られているが、3回以上の川崎病罹患例の頻度は不明で、その臨床像の推移についての検討は少ない。我々は、4回川崎病に罹患した症例を経験したので報告する。
【症例】1回目: 1歳4ヶ月時に川崎病と診断。リスクスコア(Kobayashi T et
al. Circulation 2006;113:2606-12)は2点であった。第4病日よりガンマグロブリン超大量療法(IVIG)
2g/kg投与を行い速やかに解熱した。冠動脈病変合併は認めなかった。 2回目: 2歳0ヶ月時に川崎病と診断。リスクスコア1点。第5病日よりIVIG
2g/kg投与で速やかに解熱し、冠動脈病変合併を認めなかった。 3回目:2歳9ヶ月時に川崎病と診断。リスクスコア4点。第2病日よりIVIG
2g/kg行い一旦解熱傾向が認められたが、再燃したため第9病日にIVIG 1g/kgを追加投与し、ウリナスタチンも併用した。急性期3.3mmの冠動脈拡大を認めたが1ヶ月後にはregressionした。
4回目:3歳7ヶ月時に川崎病と診断。リスクスコア7点。第4病日よりIVIG 2g/kgを投与した。一旦解熱したが再燃したため、第8病日よりプレドニゾロン2mg/kg/dayを追加投与した。腎機能障害を認めたが治療により軽快し、冠動脈病変の合併は認められなかった。
【考察】本症例ではリスクスコアが再罹患するたびに増加しており、リスクスコアが4点以上であった3回目、4回目の罹患では追加治療を要した。再発例が冠動脈病変合併のハイリスク群であることは全国調査により報告されているが、再発を繰り返し重症度が増していく症例の意義については、今後の蓄積が必要と思われる。
|
|
|
 |