川崎病による冠動脈障害のため二枝バイパス・僧帽弁置換術を施行し
22年心事故なく良好に経過している症例 小児に内胸動脈を使用した第一成功例

国立循環器病センター小児科 脇坂裕子 津田悦子 越後茂之
国立循環器病センター心臓血管外科 北村惣一郎
症例は29歳、男性。生後4か月時に川崎病と診断され、急性期を過ぎて心雑音を指摘された。胸部レントゲン写真で心拡大があり、1歳時の心カテ、選択的冠動脈造影(CAG)で、左右冠動脈に巨大瘤があり、僧帽弁閉鎖不全(MR)がみられた。1983年(6歳時)に胸痛があり、トレッドミル検査でST低下、多源性心室性期外収縮がみられた。心カテ、CAGで右冠動脈(RCA)局所性狭窄(LS)、左前下行枝(LAD)LS、MR4度であった。大伏在静脈(SVG)を後下行枝(4PD)に、そして小児に対して初めて左内胸動脈(LITA)を用いて左前下行枝への冠動脈バイパス術および僧帽弁置換術(SJM25mm)を施行した。以後心事故なく経過した。2006年 (29歳時)に心カテ、CAGを施行した。平均肺動脈圧12mmHg,左心室拡張末期圧 10mmHgで、人工弁の開放は良好であった。左心室駆出率は48%であった。両側グラフトは開存していた。LITAは良好に成長しており、SVGは遠位に壁の不整たみられた。冠動脈については、左主幹部とRCA起始部で完全閉塞し、左回旋枝はSVG-4PDからの側副血管で造影された。トレッドミル検査ではST変化はみられなかった。ワーファリン、アスピリン、βブロッカー、ATIIブロッカーにて経過観察中である。
川崎病による冠動脈障害のため二枝閉塞をきたした幼児例に対する治療
国立循環器病センター 津田悦子
国立循環器病センター小児科 南憲明 則武加奈恵 越後茂之
国立循環器病センター心臓血管外科 小林順二郎
西神戸医療センター小児科 野崎英之 深谷隆
【症例】1歳10か月の男児。4か月時川崎病に罹患した。7か月時の心臓カテーテル検査(心カテ)では右冠動脈(RCA) 瘤10mm、左冠動脈瘤9mmであった。ワーファリン、アスピリンで経過観察されていた。1歳10か月時、顔面蒼白、意識消失があった。心エコー検査で左心室の下壁、後壁の壁運動低下があり、入院した。翌日、再度顔面蒼白嫌となり、12誘導心電図で、胸部誘導のST低下があり、急性心筋梗塞と診断された。経静脈的に血栓溶解療法が施行された。心カテでRCAの完全閉塞、左前下行枝 (LAD)の99%狭窄を認めた。ドパミン、ミルリノンが投与されたが、肺うっ血、浮腫が出現し、当院に転院した。人工呼吸管理を施行し、フロセミドの持続点滴を開始した。6日後抜管し、12日後ドパミンを中止した。13日後の心カテでは、左心室駆出率は37%であった。1か月後、冠動脈バイパス術(左内胸動脈LAD吻合)を施行した。術後1か月の心カテで、グラフトは開存していたが、LVEDP20mmHgであった。BNP高値が続き、ミルリノンの持続点滴、利尿剤、ACE阻害薬の内服をし、0.02mg/kgのカルベジロールの導入を行った。術後11か月の心カテでは、LVEF44%、LVEDP3mmHgと改善した。
乳幼児でも冠動脈バイパス術は可能であるが、広範囲心筋梗塞は低心機能をきたし、治療に難渋する。重症心不全の治療に少量のカルベジロールは有効であった。
 
巨大瘤壁のvasa vasorumを介して灌流されていた前下行枝にCABGを、
また回旋枝の巨大瘤に対し縫縮術を施行した1例

日本医大小児科 渡邉誠 深澤隆治 池上英 阿部正徳 小川俊一
日本医大心臓血管外科 山内仁紫 落雅美
東京医科歯科大学小児科 脇本博子 土井庄三郎
【症例】12歳女児。平成12年8月に川崎病に罹患。冠動脈障害を認めず東京医科歯科大学にて経過観察されていた。平成15年8月にTSSの診断にて某医に入院。平成16年8月の定期検診時に、LCAに巨大瘤が認められる。CAGにてseg6に10mmの巨大瘤およびその遠位部に75%狭窄、seg11に11mmの巨大瘤が認められた。平成17年8月に再度のCAGを施行。LADの狭小化が認められ、さらに、心筋虚血が疑われ、紹介にて当科受診。 その後の経過:再度のCAGを施行。LADのsegment6に15x17mmの巨大瘤が認められ、その内腔2/3は血栓および内膜の肥厚により占拠され遠位部において閉塞。LADは瘤の内腔より直接描出されず、巨大瘤壁のvasa vasorumおよびRCAのCNを介してlate phaseに描出された。また、巨大瘤と対角枝(Dx)の間に99%の狭窄が認められた。さらに、LCXのsegment11に12x19mmの巨大瘤、segment13-14に5x6mmの瘤が認められた。巨大瘤前後での狭窄は認められなかったがFlow wireにてAPVは5cm/secと異常に低く、また、flow patternはturbulent patternであり、CFRも1.2と異常値を呈した。以上より、LITA-Dx-LADのCABGとseg11の巨大瘤に対する縫縮術の適応と診断され、平成18年3月7日に外科治療を施行した。術後はワーファリン、アスピリン、ARBを内服。 外科治療後の経過:術5ヵ月後に施行した、CABGでは、LITA-DX-LADの吻合部に有意な狭窄は認められず、良好な灌流状態であることが確認された。また、縫縮部での血行動態も改善し、ワーファリンよりの離脱が可能であった。心筋虚血の改善も確認された。
左冠動脈主幹部狭窄病変に対しPTCRA施行後、
急激に再狭窄を認めた一例

久留米大学循環器病センター 家村素史
久留米大学小児科 籠手田雄介 岸本慎太郎 石井治佳 前野泰樹 須田憲治 松石豊次郎
【背景】ロータブレーターによる冠動脈形成術(PTCRA)は川崎病後の狭窄性病変に対する治療法として効果があることは認められているが、その適応や予後についてはまだ不明な点が多い。
【症例】6歳男児、1歳7ヵ月時に川崎病罹患、合併症として両側巨大冠動脈瘤を形成した。経過とともに冠動脈の狭窄を認めるようになり、4歳4ヵ月時に左冠動脈主幹部の90%狭窄を確認、胸痛や胸部不快感などの狭心症症状も認めた。4歳6ヵ月時に左右内胸動脈を左前下行枝と回旋枝につなぐ冠動脈バイパス術を施行。狭心症症状は軽快したが、5歳7ヵ月時のフォローアップカテーテル検査では右内胸動脈から左前下行枝へのバイパスは閉塞していた。その後再び胸痛、腹痛などの狭心症症状、負荷心筋シンチグラフィー(RI)で著明なST低下を認めたため、5歳11ヵ月時に左冠動脈主幹部狭窄に対して1.5mmのburrを用いて合併症無くPTCRAを施行した。一時的に、症状の改善を認めたが、6歳1ヵ月時ころより、再び労作時胸痛頻回となり、負荷心筋RIを施行したところ、著明なST低下と虚血所見を認め、6歳2ヶ月時、より大きなburrを用いたPTCRA目的で入院した。前回と同様に、左冠動脈主幹部にガイドワイヤーを挿入したが、その直後より心電図にてSTの低下出現、心停止となり、補助循環などを用いて蘇生を試みたが救命できなかった。
【考察】本症例は1度目のPTCRA後、2ヵ月後には狭心症症状が再出現しており、狭窄部の急激な閉塞が進行していたと考えられ、遠隔期の緩徐な狭窄の進行とは違う機序が示唆された。このような年少例の重症川崎病患児に対して、治療戦略の再検討をする必要性があると考えた。