肺水腫にて発症した川崎病後僧房弁腱索断裂の一例
あいち小児保健医療総合センター循環器科 福見大地 足達信子 沼口敦 安田東始哲 長嶋正實
豊川市民病院小児科 小倉良介 
豊橋市民病院小児科 安田和志 戸川貴夫
症例は生後3ヶ月時に川崎病を発症し、その一ヵ月後に肺水腫を伴う心不全にて緊急入院となった4ヶ月女児。僧房弁閉鎖不全、それに伴う肺水腫、肺高血圧のため、人工呼吸、強心剤の持続静注を一ヶ月続けたが改善に乏しく、外科的治療が必要との判断で当センター紹介となった。入院後の超音波から僧房弁腱索の断裂に伴う僧房弁逸脱と診断した。冠動脈に異常は見られなかった。利尿剤、強心剤、血管拡張剤、酸素にて呼吸器から離脱した状態で、静脈注射も必要としないくらいまで改善し、現在外来通院中である。腱索断裂に伴う僧房弁逸脱は急激な発症と重度の心不全のため、救命が難しいケースが多い。本症例では手術を要さずに急性期を乗り越えた貴重な症例と考え報告した。
川崎病罹患後に冠動脈瘤・腹部大動脈瘤が認められた
Marfan症候群の1男児例

茨城県立こども病院小児科 塩野淳子 磯部剛志 村上卓
慶応義塾大学医学部小児科 林拓也
【はじめに】川崎病では冠動脈以外の動脈瘤の発症が知られている。一方、Marfan症候群における大動脈瘤は有名であるが、腹部大動脈瘤単独は稀であり、また年少児における報告は少ない。我々は、川崎病既往のMarfan症候群の男児で、偶然に腹部大動脈瘤を発見したので報告する。
【症例】5歳、男児。父がMarfan症候群と診断されており、大動脈弁置換および大動脈人工血管置換術を受けている。患児は1歳3か月時に川崎病と診断され、ガンマグロブリン200mg/kgを5日間、さらに1g/kgを1回追加投与された。有熱期間は計16日間であった。冠動脈瘤を形成したため当院を紹介され、心カテで右(seg1)最大9mm、左最大6mmの多発冠動脈瘤が認められた(この段階では、患児はMarfan症候群とは診断されていなかった。)以後、ワーファリンの内服を継続し、経過観察されていた。3歳時の心カテでは、右の巨大瘤は残存していたが、末梢の瘤は消退していた。5歳5か月時にフォローアップの3回目の心カテを行った。このとき、身長123.7cm(+3.6SD)であった。冠動脈瘤はほとんど変化なかったが、初めて腹部大動脈造影を行ったところ、腹部大動脈から右総腸骨動脈にかけて31×33mmの瘤が認められた。高身長、クモ状指などの所見と家族歴から、Marfan症候群と診断した。無症状であるが、手術も視野に入れて、慎重に経過観察中である。
【まとめ】腹部大動脈瘤が発生した時期は不明であるが、川崎病との関係も否定できない。Marfan症候群で川崎病に罹患した症例報告は見当たらなかった。Marfan症候群のような結合組織系疾患を基礎疾患に持つ症例では、冠動脈以外の動脈瘤にも注意したほうがよいかもしれない。
興味深いBNP値の推移を呈し巨大冠動脈瘤を合併した川崎病の一例
浜松医科大学小児科学教室 岩島覚
【症例】4ヶ月女児〔経過〕平成18年3月24日より発熱、25日より全身に紅班出現し近医受診、WBC9200/μl、CRP 1.6mg/dl、GOT 130 U/l、GPT 213 U/dlであったため近医総合病院入院、眼球結膜の充血、口唇発赤、硬性浮腫を認め川崎病と診断され 第5病日よりアスピリン30mg/日ガンマグロブリン2g/kg投与。解熱せず第7病日、ガンマグロブリン同量投与、解熱せず第9病日よりステロイド静注(2mg/kg)開始、3日間投与するも解熱せず第12病日に当院紹介入院となった。
【入院時現症】身長63cm、体重6935g、体温38.2度、胸骨左縁第3肋間に2/6の収縮雑音を聴取した。血液所見においてはWBC 30700/μl、CRP 3.9 mg/dl IgG 3321 mg/dl BNP 103pg/dl。入院時(第12病日)の心エコー所見においては心のう液は認めず軽度の冠動脈拡張と僧帽弁逆流を認めた。入院時やや解熱傾向にあったため再度ガンマグロブリン2g/kgを投与するも解熱せずCRPの再上昇を認めたため第14日病日から2日間血漿交換療法施行。速やかに解熱し炎症反応の軽快を認めた。しかし第16病日より冠動脈の拡張を認め、第27病日にかけて左右巨大冠動脈瘤形成、大量の心のう液貯留を認めた。この間のBNP値は第15病日79.3pg/dl、第22病日13.3pg/dl、第53病日10.4pg/dlと心のう液貯留と巨大冠動脈瘤を形成していった第22病日頃には、ほぼ正常範囲内の値となっていた。経過中のECGにおいてST変化は認めず、第57病日に冠動脈造影を行い左右冠動脈に巨大冠動脈瘤を認めた。現在、ワーファリン、アスピリン、抗血小板剤の3剤にて抗凝固療法中である。
【考察】今回の症例においては第22病日にはBNP値はほぼ正常域であったが心エコー所見においては進行性に左右冠動脈瘤、心のう液貯留を認め心エコー所見とBNP値は、まったく解離していた。これは今回の症例においては血管炎、心膜炎を進行性に認めていた時期には。心筋障害は軽微であったことが推測され、川崎病症例における血管炎、心膜炎はBNP値に反映されない可能性が示唆された。今後の症例の集積が必要と思われた。