マイコプラズマ肺炎の患児で川崎病を併発する児の特徴
鹿児島県立大島病院 上野健太郎 今村真理 清保博
鹿児島大学小児科 野村裕一 河野嘉文
鹿児島県立薩南病院 荒武真司
【目的】マイコプラズマ肺炎(MP)に川崎病を併発した例 (M-KS)の報告は稀にみられる。M-KSは通常の川崎病と較べて主要症状の出現が遅いことが報告されており、その発症の可能性が事前に分かることは診断の遅れや冠動脈後遺症を防ぐことに繋がる。そこで、多くのMP症例の中でどのような例が川崎病を発症するのか検討した。
【方法】
1流行期のMP症例の中で、M-KSの3例 (M-KS群)、皮疹を認めるも川崎病の主要症状がそろわなかった3例、それ以外の13例 (MP群)の3群に分けて、臨床症状、検査値を比較し、その特徴について検討した。
【結果】
M-KSは全例稽留熱を呈し、平均発症年齢は8歳と、通常の川崎病と比較して高い傾向にあった。3例のM-KSのうち、2例で川崎病の主要症状5項目を満たしたのが、第9、第10病日であり、やはり主要症状の出現が遅いことも特徴と思われた。血液検査所見では、M-KSはMPと比較してAST, LD, Triglyceridesが有意に高値で、総蛋白、血清Naが有意に低値だった。なかでもTriglycerides異常(200 mg/dl以上)や血清Na異常(135 mEq/L以下)はMP群ではみられず、M-KSの3例全例に見られた異常だった。皮疹を認めるも川崎病の診断には至らなかった群は、M-KSとMPの中間の値を示していた。また、M-KSは全例血清フェリチン、尿中β2ミクログロブリンが高値であった。
【考察】M-KSの診断が遅れないためには、MPに川崎病を併発する場合があるという認識が重要である。MPで稽留熱を呈し、Triglycerides値や血清Na値の異常を認める例においては、川崎病を念頭に注意深い観察を行うことが必要と考えられた。
川崎病の診断基準を満たしたベロ毒素非産生の病原性大腸菌O-26感染症の幼児例
金沢医科大学病院小児科 秋田千里 北岡千佳 佐藤仁志 山村淳一 中村常之
【はじめに】感染症に伴ったスーパー抗原関連疾患と川崎病臨床像の類似は以前より報告されている。特にブドウ球菌、連鎖球菌、エルシニア等はスーパー抗原関連疾患の原因感染症として有名である。また、病原性大腸菌はベロ毒素産生により、各種サイトカインが誘導され、初期に川崎病との鑑別が困難であるケースもある。今回の症例は経過中にベロ毒素非産生の病原性大腸菌O-26感染症であることが明らかになった。しかし冠動脈障害(拡張)を認めていたため、川崎病の治療を優先した。診断に至るまでの検査結果、治療経過について、文献的考察も含め報告する。
【症例】症例は5歳男児で頚部リンパ節腫脹、発熱、眼球充血を呈し、川崎病疑いにて金沢医科大学病院小児病棟に入院となった。入院時より腹痛を訴えていたが、下痢・嘔吐など消化器症状は認めていなかった。血液検査にて胆道系酵素が異常高値で、腹部超音波検査、CT検査を行ったが、肝実質及び胆道系に異常を認めなかった。しかし、腸管感染症を疑わせる腸管の異常な拡張及び腸液の存在が指摘された。SBT/CPZの投与開始したが、薬診と思われる副作用併発のため、中止した。後日、便培養にて病原性大腸菌O-26(VT陰性)が検出された。腹部症状は乏しく、整腸剤のみ内服とした。一方、川崎病の主要症状は3/6を満たすだけであったが、冠動脈障害もあるため、γグロブリン大量療法、アスピリン治療を開始した。治療に対する反応は良好で、川崎病症状も改善し、さらに抗生剤使用なしにて、病原性 大腸菌も陰性化した。
【まとめ】本症例を経験し、ベロ毒素非産生の病原性大腸菌O-26感染症が川崎病症状を引き起こした直接の証拠はなかった。しかし、実際に冠動脈障害を認めた症例でもあり、川崎病発症機序を考察する上でも重要であると考える。
咽後蜂窩織炎で発症した川崎病の1例
近畿大学医学部奈良病院小児科 鎌田航也 吉林宗夫 三崎泰志 石原温子 北村則子
【症例】10歳 男児 39度台の発熱と左頚部腫脹および疼痛を認め、第3病日に当院外来を受診し、精査加療目的で入院した。頚部CT画像にて左頚部リンパ節腫脹とともに中下咽頭背側に蜂窩織炎と思われる低吸収領域を認めた。咽頭喉頭ファイバーにて左側咽頭部の腫脹を認め、外科的切開排膿が可能な部位ではなく、保存的治療を行うことになった。咽頭喉頭ファイバーでは気道空間は確保されていたが、頚部CT画像上ガス像を認めたために、嫌気性菌による急激な気道閉塞の可能性も考えられ、嫌気性菌を含めた広域スペクトラムの抗生剤2剤の投与を開始し、抗炎症効果を期待してステロイド剤を併用した。第4病日に一旦解熱した。第6病日から両側眼球結膜の充血を認めた。第10病日に咽頭部の腫脹が消失したことを確認し、ステロイド剤の投与を中止した。第11病日から再度の発熱と口唇発赤、心臓エコー検査での冠動脈の壁輝度亢進を認め、この時点で6主症状のうち、発熱、頚部リンパ節腫脹、両側眼球結膜充血、口唇発赤の4症状を満たしており不全型川崎病と診断した。γグロブリン2g/kgを静注しアスピリンの経口投与を併用したところ、第13病日に下熱し、上記症状の軽減を認めた。その後症状の再燃は認めず、第15病日に頚部CTで蜂窩織炎の所見がないことを確認し退院となった。入院経過中に心臓エコー検査での冠動脈の拡張所見は得られなかった。以後外来での経過観察を行っているが、冠動脈の異常所見は認めていない。咽後蜂窩織炎を初発症状とした稀な川崎病の1例を報告した。
Streptococcus mitis 由来ヒト血小板凝集因子の抗原性に関する検討
メデカジャパン・ラボ 大國寿士
日本医大微生物免疫 留目優子
大宮医師会病院 安田正
日本医大小児科 深澤隆治 小川俊一
国立成育医療センター 阿部淳
【目的】 これまでに川崎病患児の口腔内から分離されたS. mitis、Nm65 株の産生するヒト血小板凝集因子の塩基配列を基に、組み換え体(Sm-hPAF)を作製し、その性状を明らかにすると共に、川崎病患児血清中のSm-hPAFに対する抗体を測定し、本抗体が対照群に比し川崎病で優位に高いことを報告してきた(第16回レンサ球菌国際シンポ)。 今回は、このSm-hPAFのエピトープを明らかにすることを目的とした。
【方法】 recombinant Sm-hPAF(rSm-hPAF全長)、N-末端186 から205アミノ酸残基の20残基(H-TQVGQDRTAPVVDQTSALKD)の合成標品、この20残基のN-端ならびにC-端よりそれぞれ10残基のアミノ酸を合成し、これにBSAを結合した合成標品ならびにこの20残基の中央部分を合成し、これにBSAを結合した合成標品をそれぞれ抗原として使用した。抗体は急性期川崎病患児、対照として他の熱性疾患ならびに健常成人の各血清を用い、それぞれinformed consentのもとに採取された。血清は800倍に希釈し、抗体はELISA法で測定した。
【結果】 rSm-hPAF全長ならびに20残基を抗原として抗体を測定すると、IgG抗体レベルで川崎病患児血清が対照群に比し優位に高いことが明らかにされたので、この20残基の前半10残基、後半10残基、中央10残基にそれぞれBSAをキャリアーとして結合させ、これを抗原として、抗体を測定すると前半、後半の各10残基間では抗体価に明確な差が認められなかったが、中央10残基を抗原とした時は20残基を抗原としたときよりやや低い価であったが、川崎病患者児血清は対照群に比し優位に高い価を示した。
【考察】 rSm-hPAF全長中の抗原決定基の少なくともその一部はN-末端20残基中に存在し、恐らくそのエピトープは中央10残基に依存している可能性が示唆されるが、されに検討する必要があるが、川崎病を早期に予測する一つの手立てとしてこれら抗体の測定が役立つかも知れない。
急性期川崎病における血中Resistin(レジスチン)の変動
東邦大学医療センター大森病院小児科 監物靖 嶋田博光 中山智孝 松裏裕行 月本一郎 佐地勉
東邦大学医療センター大森病院膠原病科 楠夏子 川合眞一
【目的】ResistinはTNF-alpha同様、adipocytokineの1種であり、糖尿病や関節リウマチ、動脈硬化症等での関与が注目されている。今回、川崎病患者におけるガンマグロブリン療法(IVIG)前後での血中Resistinの変動を検討した。
【方法】急性期川崎病典型例12名(男8女4、年齢4m-4y4m・中央値2y5m)において、IVIG(1-2g/kg)前後(投与後は平均6日)でHuman Resisitin ELISA Kit(B-Bridge International)を用いて血中Resistin濃度を測定した。
【結果】IVIG前後で血中Resistin濃度は23.2±15.7 ng/mlから8.68±6.88 ng/mlと有意に低下した(p<0.01)。IVIG投与前のResistinは学童-成人の正常値3.15-4.25 ng/mlに比較して著しく高値であった。
【考察】ResistinはIL-6やTNF-alphaによって血中濃度が上昇し、NF-kBを介した炎症亢進作用や、血管内皮細胞の接着因子発現を促進する作用があるといわれている。今回IVIG投与によりResistin濃度は低下しており、川崎病の病態への関与が示唆された。