18. 若年性特発性関節炎様の経過をとる川崎病に関する検討 Case reports
and review of Kawasaki disease presenting juvenile rheumatoid arthritis-like symptoms
渡辺 循 鮎沢 衛 宮下理夫 福原淳示 阿部 修 市川理恵 金丸 浩 住友直方 麦島秀雄 (日本大学医学部小児科) 原田研介
(日本大学総合科学研究所) Jun Watanabe Mamoru Ayusawa Michio Miyashita Junji Fukuhara
Osamu Abe Rie Ichikawa Hiroshi Kanamaru Naokata Sumitomo Hideo Mugishima (Department
of Pediatrics, Nihon University School of Medicine) Kensuke Harada (Nihon
University Institute of Science) |
【目的および方法】関節炎症状の強い川崎病はしばしば経験され、中には若年性特発性関節炎との合併と診断された報告も多い。自験例では、重症な経過にもかかわらず冠動脈障害を認めなかったため、同様の症例に関する文献を集め、検討した。
【結果】 [症例1] 3歳1か月 男児。再発例。結膜充血以外の主要症状を呈して5病日に入院。同日からIVIG 総量5g/kg、28病日まで発熱が続き、次第に膝関節痛が悪化した。最高CRP
34.6mg/dl、最高フェリチン73.4ng/ml。イブプロフェン20mg/kgを加えたが、その後も発熱あり、IVIGを追加し30病日に解熱した。42病日に退院。心膜炎、冠動脈障害とも見られなかった。
[症例2] 7歳8か月 男児。他院で5病日にIVIG2g/kgを行い無効のため、7病日にステロイドパルス療法3日間を加えるも再発熱あり紹介された。入院時より手指と股関節、足関節の腫脹疼痛が強く、最高CRP
25mg/dl、フェリチン373ng/ml。後療法としてプレドニソロン内服1mg/kgに加え、IVIG追加と12病日からイブプロフェン30mg/kgを開始し、2日後から関節症状の軽快と解熱を認めた。心膜炎、冠動脈障害とも見られなかった。
【考察】過去の邦文報告は、論文としてはIVIG普及前に12例(うち高橋らが9例)報告され、冠動脈障害は5例(42%)、心筋梗塞合併1例であった。IVIG普及後は5例論文化されているが、冠動脈障害は1例も明記されていない。学会等の抄録では、IVIG以前も以後も1例ずつ巨大瘤の報告があったが、普及後はそれ以外の冠動脈障害4例は軽度または一過性拡張であった。JIA様症状合併例は、強い関節症状と遷延する発熱で重症感が強いが、IVIG普及後においては冠動脈瘤の合併は意外に少なく、軽度であることが多いと思われた。
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19. 川崎病再燃後にDrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)の発症が疑われた一女児例
A case report: A girl who was diagnosed as Drug-induced hypersensitivity syndrome
(DIHS) after recurrent Kawasaki disease.
稲富 直 尾崎智康 奥村謙一 森 保彦 片山博視 玉井 浩 (大阪医科大学小児科) Tadashi Inatomi
Noriyasu Ozaki Kenichi Okumura Yasuhiko Mori Hiroshi Katayama Hiroshi Tamai (Department
of Pediatrics, Osaka Medical College) |
【はじめに】薬剤性過敏症症候群(Drug induced hypersensitivity
syndrome、以下DIHS)はStevens-Johnson症候群、TENとならぶ重症薬疹として近年注目されている。我々は川崎病罹患後にDIHSの発症が疑われた一例を経験したので報告する。
【症例】1歳、女児。平成18年9月15日発熱を主訴に近医受診。川崎病と診断され同日よりフルルビプロフェン、γグロブリン投与(以下IVIG)開始され、10月2日に退院。翌日より再び発熱し、全身に発疹を認めたため、同院再入院し、川崎病再燃の疑いでIVIG施行するも解熱せず、ステロイドパルス療法、IVIG追加投与するも改善しなかった。経過中、2度全身性間代性痙攣を認めたため12日よりミダゾラムの持続投与が施行されていた。16日に当院転院となった。(入院時血液検査)WBC6040/μl(Eosino
4.0%)、Hb8.6g/dl、PLT10.5x104/μl、AST107IU/l、ALT96IU/l、LDH349IU/l、CRP1.15mg/dl、PT-INR
4.00、aPTT 51.1s、FDP 23.6μg/dl、Fib 103mg/dl。転院同日よりミダゾラムを中止し、抗DIC治療により止血機能の改善を認めたが、発熱は持続し発疹は増悪傾向で浮腫様紅斑、紅皮症へと移行した。経過中繰り返し行なわれた心エコーでは冠動脈に有意な所見は認めなかった。臨床症状および血液検査より、DIHSを疑い抗炎症剤を中止し、プレドニゾロンの内服を開始したところ発熱、皮膚症状の改善を認めた。
【まとめ】本症例ではHHV-6の再活性化を認めなかったが、主要所見はすべて満たし非典型DIHSが疑われた。本症例では、注意深い臨床症状、血液検査の観察、反復した心エコー検査の結果、DIHSによる発熱と診断し速やかな治療の転換が有効であった。川崎病罹患後にDIHSを発症した報告は少ないため、川崎病後の遷延する発熱に対しては本疾患も考慮する必要があると考えられた。
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20. 急性期CRP値1mg/dl以下で経過し冠動脈瘤を形成した川崎病不全型乳児例の経験―赤沈1時間値は免疫グロブリン選択的投与の適用基準のひとつとして有用であるか?
A case of incomplete Kawasaki disease with coronary artery aneurysm formation
and C-reactive protein (CRP) values less than 1 mg/dl in the acute phase. Is erythrocyte
sedimentation rate (ESR) clinically useful for selective intravenous immunoglobulin
(IVIG) treatment?
高橋龍太郎 (済生会今治病院) Ryutaro Takahashi (Saiseikai Imabari Hospital)
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| 症例は生後6ヶ月の女児。発疹と発熱と結膜充血あり、近医でウィルス性発疹症として経過観察されたが、5病日に川崎病不全型疑いで当院へ紹介された。発疹はまもなく消退し翌日より解熱傾向を示した。症状の再燃はみられず経過を通じて白血球数やCRP値など炎症反応は軽微で原田のスコアは2〜3点であった。7病日に施行した心エコー検査では冠動脈障害は認められなかったが、15病日の同検査で左冠動脈拡大と右冠動脈瘤が認められた。急性期に免疫グロブリン(IVIG)療法の適用と判断されず投与の時機を逸した。赤沈1時間値は13病日では43mm、22病日では17mmであった。川崎病113例のうち確実A例70名を対象に急性期(2〜9病日)の赤沈1時間値と同日のCRP値を対比し、あわせて急性期CRP低値で冠動脈瘤を形成した不全型症例の文献報告について検討した。症状が少なくても川崎病が疑わしい場合、急性期とくに4〜8病日の赤沈1時間値が40mm以上では川崎病確実A例と同等度の全身性炎症があるとみなし、確実例に準じて治療方法を選択することが望ましいと考えられた。また不全型例において急性期のCRPが低値あるいは原田のスコアが3点以下であってもまれながら冠動脈瘤を形成することがあり、今後他の炎症マーカーを組み込むなどIVIG投与の適用基準の再考が必要である。自験例と合わせて文献的に検討した結果、急性期4〜8病日の赤沈1時間値40mm前後は、冠動脈瘤を合併しうる最低ラインであり、IVIG選択的投与の適用基準のひとつとして有用であろうと推察した。 |
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21. 川崎病に胸水貯留を合併した2症例 Two cases of Kawasaki
disease with Pleural effusion
伊藤晋一 須田憲治 岸本慎太郎 籠手田雄介 工藤嘉公 石井治佳 家村素史 松石豊次郎 (久留米大医学部小児科) Shinichi
Ito Kenji Suda Shintarou Kishimoto Yusuke Koteda Yoshiyuki Kudou Haruka Ishii
Motofumi Iemura Toyojiro Matsuishi (Department of Pediatrics and Child Health,
Kurume University School of Medicine) |
川崎病では心嚢液貯留はしばしば認められるが、明らかな胸水貯留を来たす事は稀である。胸水貯留を認めた川崎病2症例について報告する。
【症例1】2歳男児。頚部リンパ節炎の診断で3病日に入院。6病日の胸部レントゲンにて胸水貯留および心拡大(CTR68%)を認め、エコーではEF52%と心機能低下も見られた。川崎病症状は発疹を除く5項目を満たしていた。IVGG(合計5g/kg)、ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン20mg/kg×8day
)、ドーパミン5γ、ミルリノン0.5γ、利尿剤を使用。人工呼吸器管理や胸腔穿刺は行わなかった。有熱期間は17日で、冠動脈瘤は残さずに退院した。 【症例2】6ヶ月男児。川崎病症状は4項目であったが,抗生剤に反応せず,他疾患が否定的であったため,前医にて5病日よりIVGG(2g/kg)開始された。6病日に一旦解熱するも、8病日より再発熱見られ、10病日の胸部レントゲンにて胸水貯留を認め、同日当院転院となった。CTRは46%で心拡大はなくエコー上EF84%と心機能低下も見られなかった。IVGG追加投与(2g/kg)、シベレスタット0.2mg/kg/hour、利尿剤投与を行い11病日に解熱。冠動脈瘤は残さずに退院となった。
【まとめ】川崎病の胸水貯留の機序として、心不全からの静脈圧上昇と、血管炎による透過性亢進が考えられる。症例1は前者が主であり、症例2は後者によるものと考えられた。いずれも人工呼吸器管理が必要となるほどの呼吸不全は来たさず、川崎病、心不全に対する治療により改善した。
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22. 川崎病の経過中に急性脳症を発症した1例 A case of acute
encephalopathy in kawasaki disease
江田明日香 佐藤厚夫(藤沢市民病院小児科) Asuka Eda Atsuo Satoh (Fujisawa
Civic Hospital) |
症例は2歳男児。2006年11月、川崎病第4病日の診断で入院した。発熱4日目で他川崎病主要症状の全てを認めた。アスピリン内服と免疫グロブリン(以下IVIG)2g/kgを2回投与し一旦軽快したが、第15病日より再び症状出現、第17病日3度目のIVIG2g/kg投与を行った。ここまでの経過中冠動脈病変は認めていない。第18病日IVIG投与終了直前に全身性間代性痙攣が重積したため気管挿管、ミダゾラム持続投与を開始しICU入室となった。頭部単純CTでは後頭葉皮髄境界がやや不明瞭で、頭部MRIではT2FLAIR・拡散協調画像にて両側やや左優位の側頭後頭葉の皮質下白質と両側視床に高信号域を認めた。脳波では高振幅徐波と左右頭頂後頭葉に棘波を認めた。他検査上明らかな異常なく髄液検査も問題なかった。以上より川崎病あるいはIVIGに伴う急性脳症を疑い、同日より35℃の軽度脳低温療法、ステロイドパルス療法、マンニトール、ウリナスタチン投与にて加療した。ステロイドパルス後、脳波・CT所見は改善したため、脳症発症6日目に復温開始、抜管した。直後は感情や知能・言語発達面での退行がみられたが徐々に改善、脳症発症8ヶ月経過した現在、画像・脳波所見は問題なく、やや多動傾向である他は明らかな後遺症を残していない。
川崎病の神経合併症は、無菌性髄膜炎、脳炎・脳症、脳梗塞、顔面神経麻痺などが報告されている。本症例では急性脳症の明らかな原因は不明であるが、川崎病自体あるいは免疫グロブリン療法の影響を考えた。本症例の鑑別疾患ついて文献的考察を加え検討したので報告する。
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23. 高校2年生に発症した川崎病の1例 A case of the Kawasaki
Disease developed to a high school student
丸谷 怜 篠原 徹 竹村 司 (近畿大学医学部小児科学) 丸山克之 北山淳一 山本雄豊 坂田育弘 (近畿大学医学部附属病院救命救急センター) 寺尾恭一
(近畿大学医学部耳鼻咽喉科学) 木村雅友 (近畿大学医学部病理学) Satoshi Marutani Tohru Shinohara Tsukasa
Takemura (Kinki University medical department of Pediatrics) Katsuyuki Maruyama
Junichi Kitayama Yutoyo Yamamoto Ikuhiro Sakata (Kinki University Hospital Critical
Care Medical Center) Kyouichi Terao (Kinki University medical department
of Otolaryngology) Masatomo Kimura (Kinki University medical department of
Pathology) |
症例は16歳の男性。左頸部に突然疼痛を伴うリンパ節腫脹が出現した(第1病日)。第3病日には38.5℃を超える発熱と体幹部の不定形発疹が出現、近医を受診し抗生物質の投与を受けたが軽快せず、第5病日に強い炎症反応のため同医へ入院となった。腹部症状を訴えることから消化管の検索が進められ十二指腸潰瘍の診断がつけられたが、高熱は持続した。第9病日、血圧の低下の低下を認めたため敗血症性ショックの疑いで当院救命救急センターへ搬送となった。転院後、心ポンプ機能の低下や著明な心膜液の貯留、房室ブロックなどで難渋、この点では心筋炎が疑われた。頸部リンパ節の腫脹では悪性リンパ腫が疑われ、同部の生検や骨髄穿刺が実施された。また、麻痺性イレウスのため経口摂取が不可能な状態も続いた。転院時31mg/dlであったCRP値は徐々に低下、第26病日には正常化した。第28病日ころから膜様落屑が出現、あわせて血小板数も著増。当初のリンパ節腫脹に注目した耳鼻咽喉科医によって川崎病が疑われ当科へ紹介受診となった。心エコー検査およびMDCTから左右冠状動脈の動脈瘤を確認、これまでの経過と合わせ川崎病と確定診断した。
(1)頻度は少ないが高校生に発症した川崎病であること、(2)この年齢では心エコー検査で冠状動脈瘤の全容を把握することが困難であるが、MDCTでそれが十分補えられたこと、(3)当初、他疾患を疑われたため頸部リンパ節生検が実施され、その病理像が得られていること、などが本症例の特徴であり、若干の文献的考察を加え報告する。
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