24. 川崎病冠動脈病変合併例の妊娠・出産:4症例の経験
Pregnancy and delivery in women with coronary artery lesions caused by Kawasaki disease

鎌田政博 木口久子 中川直美 岡崎富男 (広島市立広島市民病院)
Masahiro Kamada Hisako Kiguchi Naomi Nakagawa Tomio Okazaki (Hiroshima city hospital)
【目的】川崎病冠動脈病変合併例の妊娠・出産の問題点について検討すること。
【対象・方法】乳幼児期に川崎病に罹患、冠動脈に有意な動脈瘤を合併した4例。21〜30歳の間に計5回の出産を経験、うち2例は他院での出産であった。冠動脈病変の内訳は両側巨大冠動脈瘤+右冠動脈再開通例2例(症例1,2)、右巨大冠動脈瘤1例(症例3)、右6mm冠動脈瘤1例(症例4)であった。心機能は3例で正常であった。症例2ではエコー上、左室後壁輝度の上昇およびLVEF低下(53%)を認め、造影検査の入院中にモニター上7連発のVTが観察されていた。
【結果】妊娠36〜38週にアスピリン(ASP)を中止、その約1週間後からへパリン(HEP:10単位/kg/時)を分娩直前まで投与したもの2例(症例1,4)。妊娠中期にASPを中止したもの1例(症例2)。妊娠末期(37週)にASP中止、翌日に自然経膣分娩した症例が1例あった。症例2以外、出産後に止血を確認してASPを再開した。症例2以外に関して、出産前のPTINR、APTTは正常、Fibrinogenは400mg/dl前後とやや高値であった。分娩様式は帝王切開3例(4回:全身麻酔)、自然分娩1例であり、全例、無事に成熟児を出産した。心筋虚血所見を呈したものはなかった。分娩前の冠動脈評価は心エコー(4例)、MRI(1例)で行った。
【考察・結語】当科では妊娠末期にASPをHEPに変更、分娩後止血を確認してASPを再開する方針をとっている。結果的に全例無事に出産したが、最も高度の心合併症を認めた症例2では十分に管理されておらず、小児循環器医によるフォローアップの重要性を痛感した。川崎病冠動脈病変合併例の妊娠・出産に定まった治療方針はないが、小児科、循環器内科、麻酔科など、総合管理が可能な施設で行うべきと考えられた。また妊娠時の冠動脈評価にMRIは非常に有用と考えられた。
25. 不明熱の既往があり、のちに冠動脈バイパス術と腹部大動脈瘤人工血管置換術を受けた若年男性の一例
A young adult who had undergone coronary artery bypass grafting and abdominal aortic replacement with prosthetic vessel

脇坂裕子 (国立循環器病センター小児科) 
津田悦子 越後茂之 (国立循環器病センター)
朝倉利久 (埼玉医科大学)
Yuko Wakisaka Etsuko Tsuda Shigeyuki Echigo (National Cardiovascular Center)
Toshihisa Asakura (Saitama medical college)
【症例】33歳、男性。14歳時に不明熱のため、57日間入院加療をうけた既往があった。19歳時、労作時胸痛、意識消失がみられた。近医を受診し、負荷心電図でII、III、aVF、V5、V6でST低下を指摘され、不安定狭心症の疑いで当院へ緊急入院した。緊急冠動脈造影で、両側冠動脈瘤、セグメント1、6、13の完全閉塞と診断され、緊急CABG(LITA to OM, RITA to LAD, SVG→PL1→PL2→4PD)が施行された。術後の心カテではグラフトの開存は良好であった。32歳時に腹痛のため近医を受診した時、拍動性腹部腫瘤を指摘された。CTで、腎動脈分岐下から総腸骨動脈分岐部にかけての腹部大動脈瘤と診断された。その後腹部大動脈瘤の増大傾向がみられたため、腹部大動脈瘤人工血管置換術が施行された。腹部大動脈瘤手術前の心カテーテル検査では、グラフトの開存は良好で、左室駆出率は50%であった。
【考察】不明熱の際、心エコーによる冠動脈スクリーニングは必要である。また、巨大瘤と診断された症例では、腹部大血管、四肢の動脈瘤の検査も必要である。
26. カテーテルインターベンション、CABG術前後の微小冠循環動態の検討
Estimation of Cardiac-microcirculation,before and after catheter intervention and/or CABG in children with Kawasaki Disease.

大久保隆志  池上 英 (さいたま赤十字病院小児科)
小川俊一 勝部康弘 深澤隆治 上砂光裕 渡邊美紀 初鹿野見春 阿部正徳 鈴木伸子 (日本医科大学小児科)
Takashi Ohkubo Ei Ikegami (Department of pediatrics Saitama Red Cross Hospital)
Shunichi Ogawa Yasuhiro Katsube Ryuji Fukazawa Mitsuhiro Kamisago Miki Watanabe Miharu Hajikano Masanori Abe Nobuko Suzuki (Department of pediatrics Nippon Medical School)
【目的】カテーテルインターベンション、CABG術前後の微小冠循環動態の検討を行なう。
【方法】カテーテルインターベンション(POBA4例,ロタブレーター3例)を施行した7例(カテ群)とCABGを施行した6例(CABG群)を対象。冠動脈障害が疑われるもカテーテル検査にて異常なしと判断された61例を対照(コントロール群)とした。術前後にてpressure wire 及びflow wireを用いて部分心筋予備血流量比(FFRmyo) 平均最大血流速度(APV) 冠血流予備能(CFR) 末梢血管抵抗指数(CMI:平均冠動脈内圧Pd/APV)を測定算出した。
【結果】対象とした13例全例で、術前にはDOB負荷心筋シンチグラムで心筋虚血が確認されていたが、術後には虚血所見の改善が認められた。カテ群・CABG群とも術前では、FFRmyo, CFRは我々の定めた基準値より有意な低値を示し、且つコントロール群と対比しても有意に低い値であった。また、安静時のCMIは術前ではカテ群5.9±0.8,CABG群6.1±1.4とコントロール群(2.8±0.5)に比べ有意な高値を示していた。一方、血流状態が十分に改善されたと判断された術後では、FFRmyo, CFR, CMIの値は有意に改善され、コントロール群と比し、有意差は認められなかった。
【結語】心筋虚血を惹起する責任冠動脈の末梢循環において、血流予備能の低下と末梢循環の抵抗の増加が認められたが、有効な術により正常に近い状態に復したと考えられた。比較的長期間末梢血管抵抗が高い状態が持続していても、導管の障害が改善されることで、微小冠循環動態は速やかに正常に復することが示唆された。
27. 川崎病後遺病変が疑われた冠状動脈瘤の遠位側に留置されたステントに対する過敏性反応により遅発性ステント血栓症をきたした1剖検例
Localized hypersensitivity and late coronary thrombosis associated with stent implantation at the site of sequela of Kawasaki disease.

横内 幸 大原関利章 若山 恵 伊原文恵 高橋 啓 (東邦大学医療センター大橋病院 病理)
直江史郎 (横浜総合病院 病理) 菅原重忠 (横浜総合病院 循環器科)
Yuki Yokouchi Toshiaki Oharaseki Megumi Wakayama Fumie Ihara Kei Takahashi (Toho University Medical Center Ohashi Hospital)
Shiro Naoe (Yokohama General Hospital Pathology) Shigetada Sugawara (Yokohama General Hospital Cardiology)
ステント血栓症(stent thrombosis:ST)はステント植え込み後死亡の主要な原因となる。STの原因の一つにステントに対する過敏性反応があるが、病理学的所見から過敏性反応の関連を示唆した報告例は少ない。我々は、病理所見から川崎病血管炎の後遺症が強く疑われる動脈瘤が存在し、動脈瘤の遠位側に留置されたステントに対する過敏性反応がSTの一因になったと推測された1剖検例を経験した。
【症例】40歳女性。37歳時に急性心筋梗塞にてLAD#7にステント留置術を施行。抗血小板療法を施行されているにもかかわらずその後4回にわたりステント内閉塞を認め、インターベンションを繰り返し施行していた。40歳時に心室頻拍にて突然死を来たし、剖検された。臨床的には川崎病の既往はなく、膠原病や抗リン脂質抗体症候群、凝固異常も認められなかった。剖検にて、ステント内は血栓閉塞し血管壁にはリンパ球、形質細胞と共に多数の好酸球浸潤を認めた。好酸球浸潤はステント留置部に限局していた。冠状動脈は3枝とも求心性の内膜肥厚がみられ、LAD#6、LAD-LCx分岐部およびRCA#4PDにはそれぞれ径7mmの石灰化を伴う動脈瘤を認めた。血管病変は筋層外冠状動脈に限局しており、腎臓や膵臓などの動脈には変化をみなかった。大動脈をはじめとする全身の粥状動脈硬化性変化もごく軽度であった。
【考察】本例は血管炎の瘢痕としての冠状動脈瘤が基盤に存在し、冠状動脈瘤による易血栓性状態に加えてステントに対する過敏性反応が強く関与して遅発性ステント血栓症を引き起こしたと推測された。川崎病の既往歴は確認されていないが、病理所見からは川崎病の遠隔期病変である可能性が強く疑われた。適切な抗血小板療法を行っているにもかかわらずステント血栓症を繰り返す場合には、ステントに対する過敏性反応の可能性を念頭におく必要がある。
28. 川崎病後に右巨大冠動脈瘤を生じた症例の検討
Outcome of giant aneurysms in right coronary artery in Kawasaki disease. Novel treatment by implantation of covered stent.

原 茂登 脇 研自 新垣義夫 馬場 清 (倉敷中央病院)
Shigeto Hara Kenji Waki Yoshio Aragaki Kiyoshi Baba (Kurashiki Central Hospirtal)
【はじめに】 川崎病罹患後に巨大冠動脈瘤を形成するものの3割で心筋梗塞を発症するという報告がある。しかし巨大冠動脈瘤に対する治療方針は未だ確立されていない。当院では右の巨大冠動脈瘤を形成した2名が突然死を来たしたており、その経験を踏まえて右巨大冠動脈瘤を有する患児に対し、covered stent留置を行った。その経過を含め、報告する。
【症例1】 (男性) 11歳で川崎病を発症。4ヵ月後に胸痛を来たし、近医に入院。心筋梗塞と診断された。12歳で当院を紹介となり、冠動脈造影を施行。左右の巨大冠動脈瘤、左前下行枝の閉塞が明らかとなった。17歳時に突然死を来たした。
【症例2】 (男性) 2歳で川崎病に罹患。近医にてγグロブリンの投与を受けたが、両側巨大冠動脈瘤を残した。14歳時に右冠動脈瘤内に血栓を認め、当院紹介。造影にて右冠動脈に17mm、左冠動脈に7mmの冠動脈瘤あり。18歳時に心室細動を起こし、当院に搬送となった。PCPS、IABPを使用したが救命出来ず、死亡した。
【症例3】 (男性) 6歳で川崎病を発症。近医でγグロブリン投与を受けていたが、冠動脈の拡大を認めたため当院を紹介受診。左前下行枝に6.5mm、右冠動脈に9.5mmの冠動脈瘤を認めた。その後左冠動脈瘤は縮小したが、8歳時の冠動脈造影で右冠動脈内に多量の血栓を認め、その両端で狭窄を認めた。当院循環器内科と相談し、Polytetrafuoroethylene-Covered Stentを右冠動脈に挿入した。Stent両端で内膜増生による狭窄が認められているが、術後2年5ヶ月の時点では狭窄の進行は明らかでない。
【結語】 右巨大冠動脈瘤は突然死の危険因子として十分に検討する必要がある。Covered Stent留置は、巨大冠動脈瘤に対する治療戦略の選択肢の一つになる可能性がある。
29. 巨大冠動脈瘤を合併した川崎病患者の長期予後 -遠隔期にICD植え込みを要した2症例を中心に-
Prognosis of the patients eith coronary artery lesions in Kawasaki disease. Focusing on two patients implanted ICD.

木口久子 鎌田政博 中川直美 (広島市民病院小児循環器科)
岡崎富男 (広島市民病院小児科)
Hisako Kiguchi Masahiro Kamada Naomi Nakagawa Tomio Okazaki (HIroshima city hospital)
当院で過去10年間に川崎病心後遺症の評価目的で冠動脈造影を施行した症例は53例(のべ69回)で、男:女=40:13、施行時年齢13.3±7.7歳(中央値12.8歳:11ヵ月−32歳3ヵ月)、川崎病罹患時から血管造影までの期間は10.3±7.9年(中央値9.7年:3ヵ月−27.3年)であった。巨大瘤を有していたのは16例で、75%以上の狭窄病変を12例に認めた。2例はCABG、1例はPOBA施行後にCABG、1例はPOBA後にロータブレーター、1例はPOBAのみを施行していた。経過中に急性心筋梗塞を発症したのは4例で、うち1例は急性期に死亡、遠隔期に心室細動から心肺停止状態となりICD植え込みを行ったものが2例あった。この2例の経過を中心に、心後遺症を有する川崎病遠隔期の問題点について考察を加え報告する。
【症例1】23歳女性。3歳時に川崎病に罹患、5歳で左巨大冠動脈瘤を指摘された。10歳で急性心筋梗塞を発症し、CABGを施行。21歳時に心室頻拍にて来院。除細動にて回復したが、23歳時に職場で心肺停止状態となり救急車内のAEDにて心拍再開した。脳低温療法にて後遺症なく回復、引き続きICD植え込みを施行。外来フォロー中にICDは2度作動している。
【症例2】34歳男性。3歳時にファロー四徴症根治術施行。川崎病既往は不明。23歳時に胸痛を主訴に他院受診、心機能低下あり心筋炎と診断された。34歳時職場で心肺停止状態となり救急車内でVF確認された。除細動に引き続き脳低温療法施行した結果、後遺症なく回復した。血管造影にて左冠動脈基部に巨大瘤、前下行枝は完全閉塞、その遠位に太い側副血管を認めた。左室駆出率31%と心機能低下を伴っており、ICD植え込み後退院となった。造影所見より川崎病による冠動脈瘤が強く疑われ、23歳時の心筋梗塞が今回の不整脈の原因になっている可能性が示唆された。外来フォロー中に2度ICDが作動している。